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「嫉妬」12

「鐘島先輩には関係ありません。俺たちの問題なんで」  火に油を注ぐような発言に、僕は再び「神近くん!」と諫めようと試みる。 「……どういうことだ?」  泰明の視線が僕に注がれ、まるで僕たちの関係性を疑っているようにも見えてしまう。 「良いですか、俺たちは――」 「泰明! 他の場所で話そう!」  僕は慌てて神近くんの口を手で塞ぐ。絶対今の流れは「俺たち付き合ってるんで」と言ったに違いない。  もがく神近くんに「まだ言わないで」と囁くと神近くんが、抗議の目を向けてくる。神近くんの事だから、泰明に一泡吹かせてやりたいという気持ちがあるのだろう。  だけど、泰明は僕の親友だ。まさか、自分の苦手とする人間と自分の親友が付き合っていると分かったら、気分が良いものではない。だからこそ、神近くんが優しくて悪い人ではないと分かってもらってから本当の事を話した方が、泰明だって納得してくれるはずだ。  これじゃあ本当に泰明は保護者みたいだなと、僕は心の中で苦笑いをした。 「とにかく、僕の口から話するから神近くんはここで待ってて」  僕はそう言って恐る恐る塞いでいた手を放す。 「……わかりました。先輩には借りがあるので、これでチャラです」  貸しなんてしたかな、と思いつつも僕はホッと息を吐き出し、さっきよりも明らかに不機嫌な泰明を連れて部室を後にした。

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