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「嫉妬」14
同性云々以前に、神近くんだからダメだと言われそうな気がしてならない。
ここで僕が「泰明には関係ない」と言って仕舞えば、僕たちの関係はそこで終了になることは目に見えて分かる。
「……泰明がここに来る時、校門の所で女の人立ってなかったの?」
僕は話題を切り替え、本題に移った。これ以上、神近くんの事で突っ込まれたらボロを出しそうで怖い。
「さっき来たばかりだが、そんな女立ってなかった」
僕は窓に近づき、カーテンを薄く開く。眩しいぐらいの日差しに、僕は思わず目を細める。
校門の前には確かに誰も立っていない。こんな暑い中、さすがに女もずっとはいられなかったのだろう。
「……ホントだ。いない」
僕はホッとして肩の力を抜く。振り返るとすぐ近くに泰明がいて、僕は驚いて窓枠に後ろ手を付いた。
「な、何? どうしたの?」
「俺じゃあ、頼りないか?」
「えっ?」
泰明のいつもより近い距離と不安を滲ませた言動に、思わず心臓が跳ね上がってしまう。
ふと我に返ったのだろうか、ハッとした表情をした泰明は僕から距離を取ると「悪い……」と零して背を向ける。
どこか寂しげなその後ろ姿に、最近神近くんにばかりに気が向いていて、泰明を放ったらかしにしてしまっていた事に気づかされてしまう。
「頼りなくなんかないよ。泰明は頼りがいあるし、僕の一番の親友だから」
僕の言葉に泰明が振り返ると、微かに口元を緩める。暑いから戻ろう、と泰明に促され僕は部屋を後にした。
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