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「嫉妬」15

 部室に戻ると神近くんは机に頬杖ついて、パズルを指先で弄んでいた。 「納得されましたか?」  視線をこちらには向けず、神近くんが少し低い声音で問いかけてくる。 「あぁ、今はそんなやついないみたいだけどな」 「そうみたいですね。いくらストーカーでも人間です。この猛暑の中、何時間もいられないでしょうね」  どこか神近くんが不機嫌さを滲ませた声で、ピースをはめ込んでいく。 「……神近くん?」  僕が近づいていくと、神近くんの視線が僕に注がれる。 「とりあえず、今日は俺の家に泊まってください。俺の家にはここよりも強いお札もあって、部屋には入ってこれませんから」  神近くんの言葉は僕は素直に頷く。これで少なくとも今日一日は無事に過ごせる。 「ありがとう……神近くん」  ホッとした僕はようやく言葉を発する。 「ちょと待て、俺も泊まっていいか?」  泰明の発言に僕は驚いて「へっ?」と間の抜けた声を上げる。 「無理ですね。そんなに大人数で寝泊まり出来るほど、俺の部屋は広くないので」  確かにその通りだ。ベッドも布団も一つしかないし、部屋の中もギュウギュウ詰めになってしまうだろう。 「じゃあ、みんなで俺の家に泊まればいいだろ?」  泰明がなおも食い下がる。さっきから泰明の様子も変で、僕は首を傾げた。

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