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「嫉妬」20

 緊張で持っているスマホに力がこもる。三コール目ぐらいに少し低音の声が聞こえ、僕は「さっきはごめん」と第一声に謝った。 『別にお前が悪いわけじゃない。それより、無事か?』 「うん。今のところは変わったことはないかな。親や姉ちゃんにも伝えたし。すぐにどうにかするってことは出来ないだろうけど」 『神近は? 今近くにいるのか?』  泰明の口から神近くんの名前が出たことに、僕の心臓が跳ね上がる。視線を部屋の入口に向けると、まだ上がってきてはいないようだった。 「近くにいないよ。今、シャワー浴びてる」 『あいつは、お前に少し執着しているようにも見える。くれぐれも自分が男だからって油断するなよ』  泰明の口からそんなセリフが出るなんて思ってもみず、僕は一瞬固まってしまう。 『……佐渡?』 「ごめん……ちょっとびっくりしちゃって」 『何かあったらいつでも連絡しろよ』 「うん。ありがとう。また連絡する」  そう言って僕は通話を切った。タイミングよく神近くんが部屋に戻ってくると「鐘島先輩ですか?」と僕の隣に腰かける。  同じシャンプーの香りが鼻孔をくすぐり、少しだけ緊張してしまう。 「う、うん」 「先輩は俺のですよね?」 「えっ?」  神近くんを見ると、苦虫をつぶしたような顔で僕を見つめていた。

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