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「計画」16
「ちょっと緊張してて……」
「俺から話しましょうか?」
「さすがにそれは……」
神近くんが何を言い出すのか不安で仕方ない。本当なら泰明と僕の一対一で話した方が良いんだろうけれど、神近くんが同席したいと言って引かなかった。
「僕がちゃんと話すからさ……ほんとーに余計な事言わないでよ」
僕は再度釘を刺す。不安すぎる。これだけ言っても神近くんは口を挟んでくるかもしれなかった。
「しつこいですね。わかってますよ。先輩と違って、俺は物分かりいいんで」
「本当に? そんな風に見えないんだけど」
神近くんの今までの行動を鑑みても、不安しか湧き上がらない。
「俺って信用されてないんですね。じゃあー、耐えきれなくなったら別の場所に移動します。それでどうですか?」
神近くんが少し投げやりな口調で、妥協案を上げた。
「別に信用してないわけじゃないよ。ただ、不安なだけで……」
「それを信用していないと言うんです」
暑さのせいなのか神近くんは、少しイラ立っているようで表情が険しい。
少し気まずい雰囲気の中、学校に着いた僕たちは待ち合わせしている部室へと向かった。
鍵を開ける神近くんの背後で、僕は落ち着かない気持ちでその様子を凝視してしまう。
「今度スペアキー渡しますから、そんな物欲しそうな目で見ないでください」
扉を開けつつ神近くんが、淡々とし口調で言い放つ。
「物欲しそうにしてないから!」
僕はムキになって言い返す。部室に足を踏み入れると中は蒸し暑く、外の方がまだマシに感じられた。窓を閉めっぱなしだったせいか、むわっとした熱気が部屋中に蔓延している。
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