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「計画」17

「じゃあ、いらないですか?」  神近くんがエアコンを起動させつつ、僕にちらりと視線を向けてくる。欲しくないはずがない。今までに何度も神近くんが来るまで、暑い廊下で待たされたのだから。 「欲しい」 「最初っから素直にそう言ってください」  椅子に腰かけた神近くんが、背もたれに寄りかかり深い溜息を吐き出す。僕も向かいの椅子に腰掛けると、ハンカチで汗をぬぐっていく。 「先輩」 「んっ?」 「鐘島先輩を納得させる、手っ取り早い方法があるんですけど」  神近くんが机に頬杖をついて、僕を見つめる。そんな方法があるんだったら、是非とも知りたい。 「えっ? なに?」  僕が驚いて身を乗り出すと、神近くんも腰を上げ僕の頬に手を当てた。ぐっと近くなった距離感に、僕の心臓が跳ね上がる。 「見せつけてやれば良いんですよ。俺たちの関係を」  神近くんが悪戯っぽく口元を歪め、僕の唇に指を這わせていく。 「えっ、いや、それはっ……」  僕は驚きと恥ずかしさに、やっと下がりつつあった体温が再び上がってしまう。慌てて身を引くと、椅子にドシッと座り込む。あのままでは本当に、キスでもされてしまいそうな雰囲気だった。 「照れてるんですか?」 「照れない方がおかしいから……」 「手っ取り早いと思うんですけどね」  神近くんはつまらなそうな表情で、窓の外に視線を向けた。

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