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「計画」19

 落ち着かない僕に見兼ねたのか、泰明が鞄からお茶のペットボトルを取り出した。 「さっき買ったやつでまだ冷たい」と言って僕に手渡してくれる。 「あ、ありがとう」  緊張のせいで僕は喉が渇いていて、泰明の気遣いにさすがだなぁと、呑気に思いつつ蓋を回す。 「先輩!」  牽制するような神近くんの声に驚いて、僕はボトルに口を付けようとしたところで動きを止めた。 「えっ? なに?」 「何じゃないですよ。それ、鐘島先輩が口つけたやつですよ? 開けた時に分からなかったんですか?」  神近くんの苛立ちの孕んだ口調に、僕も泰明も驚いて顔を見合わせる。 「自覚ないんですか? それなら相当の馬鹿ですよ。さっさと言わないなら俺が言います」  神近くんの脅しでやっと腑に落ちた僕は、「あっ、ご、ごめん」と言って蓋を閉めた。 「……どういう事だ?」  慌ててペットボトルを返す僕に、泰明が訝しげな表情を向けてくる。今までなら平気で口にしていたのに、今になって拒否されたら不思議に思わないのも無理はない。意識せず平気でやってこれたことも、これからはセーブしていかないと神近くんの嫉妬に火を点ける事になるのだろう。 「実は……僕、神近くんと付き合っているんだ」  乾いた唇のまま、泰明の顔をまともに見れず、僕は視線を俯ける。心臓が煩いぐらい鳴り響き、冷たい汗が背筋を滑り落ちていく。

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