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「帰省」4

 ちらりと神近くんを見遣ると唇を噛み締め、お兄さんとは対照的に表情が険しい。 「久しぶりの再会なのにつれないな」  お兄さんは苦笑をして肩を竦めると、今度は視線が僕の方に向けられた。 「あっ、はじめまして。佐渡 朔矢です。お世話になります」  僕が慌てて頭を下げると、ふわりと笑って頷いた。 「うん。よろしくね。遠路はるばるお疲れ様。さぁ、車に乗って」  お兄さんに促されるように僕たちは、車の後部座席に乗り込む。  車がスムーズに走り出して暫くすると、「父さんは?」と神近くんが投げやりに言葉を吐き出した。 「お祭りの準備に追われてたから、僕が代わりに来たんだ」  バックミラー越しに微笑みかけるお兄さんはどっからどうみても優しげで、神近くんの帰省を素直に喜んでいるように思えた。  それでも黙り込む神近くんに、見かねた僕は「お祭りやるんですか?」と代わりに言葉をつないでいく。 「うん。智依から聞いてるとは思うけど、うちは神社でね。毎年、小規模だけどお祭りを催しているんだよ」 「凄いですね! でも、そんな忙しい時にすみません……」  お祭りの準備がどれぐらい大変なのか詳しいことは分からなくとも、主催者であるのなら、ことさら忙しい事は察しがつく。

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