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「虚像」24
「そうなんだ。高校男子校でしょ?なかなか出会いないよね」
お兄さんが本当に納得したかは分からないけれど、一先ず僕はホッと胸を撫で下ろす。
「智代、あの子とヨリ戻すかもね」
神近くんの家が見え始めた頃に、お兄さんが唐突に切り出した。
「どうしてですか?」
嗾けてきているのかもしれない。分かっていても、僕は思わず聞いてしまう。
「あの女の子、智代と会って謝りたいって言ってたから。それにさっきも、良い雰囲気で手を繋いでたからさ」
お兄さんの言葉に、血の気がスッと引いていく。嘘かもしれない。信じちゃダメだ。分かっているのに僕は足元がグラつきそうなほど、ショックを受けていた。
「後輩のこんな話は聞きたくないかな?でもね、智代が彼女出来たらまた、あのホラを吹聴したりするかもしれないだろう?だから君からも、言ってやって欲しいんだ。あんまり人を怖がらせるような事言うなってね」
家が間近に迫り、家の中の明かりが外に伸びていた。お兄さんが立ち止まったので、僕も立ち止まる。
「じゃあ、よろしくね」
お兄さんは自転車を来た道に向けて跨ると、走り出そうとペダルに足をかけた。
「お兄さん」
僕の呼びかけに、お兄さんが首だけ振り返った。
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