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「久遠」4
「別に構わないよ。今日は非番だからね。さすがに何日も連続で出勤させられたら、身がもたないよ」
お兄さんはそう言って笑った。まるで昨日のやりとりは無かったかのような穏やかさだ。僕が啖呵切ったような発言を、たいして気にしていないのかもしれない。
「ところでさーー」
お兄さんが緩くハンドルを切りながら、なんて事のないように切り出した。
「二人は付き合ってるの?」
お兄さんの言葉に、途端に空気が凍りつく。黙っていたら肯定とみなされてしまうと、僕はぎこちない作り笑いを浮かべる。否定の言葉を言おうと口を開きかけると、神近くんが僅かに体を前に倒して「そうだけど」と口にした。
「それが何?問題でもある?」
淡々とした口調で神近くんはそう言うなり、僕の手を掴んだ。力強いその手に、僕は全身が硬直して言葉を失ってしまう。
ガタガタと石を踏む度に車体が僅かに上下する。緊張感で満たされている車内は、その弾みがやけに重たく感じられた。
しばしの沈黙が流れた後、お兄さんが静かにため息を吐き出す。
「村の人や両親に、バレたらどうなるか分かっているの?」
お兄さんの言葉に、僕は血の気が引いていく。居た堪れない気持ちに、視線を俯けるしかなかった。
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