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「久遠」10
「どこ?どこにいるのぉ?」と言いながら階段を上っていく足音が聞こえ、今の隙にとスマホで僕に帰ってくるなと連絡しようとしたが繋がらない。父は仕事に行って、姉は北海道。だから僕だけが戻ってくる可能性があった為、いても立ってもいられなかったようだ。祈るように電話していると、家の近くでパトカーの音がしてすぐさまインターホンが鳴る。
でも出てしまったら、捕まるかもしれないとそのまま息を潜めていた。リビングから人の声が聞こえ始め、そこでようやく母はトイレから出てリビングへ行き、驚く警察官に助けを求めたそうだ。
女は二階にいて、僕の部屋と姉の部屋を荒らしていたところを警察に捕まった。事情聴取のため、母も警察に行くことになり、連絡が先に繋がった姉に事の次第を告げたそうだ。父にもその後、連絡がついてすぐに警察に来てもらう形になった。
姉も今すぐにでも戻ろうとしたけれど、母はそのままそっちにいろと押し留めた。犯人の女は捕まってはいても、母からしたらこっちに戻って来るよりも、向こうのほうが安全だと考えたのだろう。
『犯人はあの女だと思うの。朔矢が不安がってたのに、ちゃんと話を聞かなくてごめんね』と姉は少し震えた声で言った。
とにかく安全そうな場所にいて、母からの連絡を待つようにと姉に指示されて、僕は学校に行くことになった。
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