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「久遠」12
「とりあえずそれ飲んで落ち着け」
「……ありがとう」
僕がお茶を飲んでいると、泰明が僕の隣の椅子に腰かけた。
「何があったんだ?」
僕がボトルを机に置くと、泰明が見計らったように固い口調で聞いてくる。僕は神近くんとの話は触れずに、実家に戻った時の惨事と姉からの電話で聞いた話を掻い摘んで話していった。
「そうか……災難だったな。でも無事でよかった」
僕の話を黙って聞いていた泰明が、やっと口を開いた。
「……うん。本当は一泊の予定だったから、もし帰ってたら巻き込まれてたかもしれない」
口に出しても想像しても、恐怖で体が震えだす。もし、母がいないときにその女が訪ねてき
たら……僕は母みたいに機転を利かせられただろうか……たぶん無理だろう。
「大丈夫か? 顔色真っ青だし、震えてるじゃないか。保健室に行くか?」
泰明の手が肩に触れ、顔を覗き込まれる。妙に意識してしまったせいか、心臓が跳ね上がってしまう。静まり返った密室に二人だけ。今までは気にしたことはなかった。でもあの告白があったせいか、やっぱりどこか意識してしまう。
返事をしない僕に泰明も、どこか居心地悪げに体を離す。僕の思っていることが分かったか、それとも泰明も意識してしまったのか。僕は俯けていた顔をあげられず、どんな顔をしているのか分からなかった。
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