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第6話
「幸司が幽霊っぽくないのが悪い。怖がってほしいなら、もうちょっと透けるとか、血まみれになるとか、幽霊っぽくなる努力してよ」
「幽霊っぽくなる努力?! うう〜ん、幽霊っぽくなるってどうしたらいいんだろう。絵の具で顔を赤く塗っておく? それとも、無理しないでさっさと成仏したほうがいいのかな。やっぱり生きてる間に少しくらい仏教を学んでおかないと、すんなり成仏できないのかもしれない。明日朝イチで本屋に行って、仏教の本、幽物離脱してこなきゃ。流し読みだけでも成仏できるかな? 葬式までに間に合う?」
「間に合うとか間に合わないとかいう以前に、それ、生きてる人間なら犯罪。幸司、仮にも先生だよね」
俺がつっこむと、幸司は気まずそうに口を閉ざした。自分が死ぬというデリケートな時に、きつく言い過ぎたと思って反省する。
「ほかに、成仏できる方法はないかな。子供たちとした約束以外に、何か未練はあったりする?」
「未練、未練……か。あるっちゃー、ある」
歯切れの悪い言い方だが、思い当たることがあって安心した。何もないとなると、この先どうしたらいいのかわからなくなってしまう。
「なんだ、あるんだ。それならそれを解決すれば成仏できるんじゃない?」
「解決、してくれんの?」
その言い方に違和感を覚えた。まるで幸司じゃなく、俺が解決するみたいな言い方だ。
「手伝えることは、手伝うけど……」
距離をあけて寝転んでいた幸司が、体を起こして近付いてくる。
「じゃあさ、慎がオナニーしてるところ、見せて」
「はいっ?!」
突拍子もない言葉に、頭がついていかない。いまいち理解しきれていない俺に、幸司は繰り返した。
「だーかーらー。オナニー見せてってば」
「大きい声で言わなくたって聞こえてるよ。どうしてそんなもんが見たいわけ?」
「キスしたいとか、エッチしたいって言っても……もう死んでんだから、触れないだろ。だから、オナニー見せて」
「なんで、俺のなんか。つーか、“だから”の使い方おかしくない? 一人でしてるとこ見て、楽しい? それとも俺で憂さ晴らししたいわけ?」
目の前でオナニーさせるなんて、学生時代の陰湿なイジメみたいだ。俺はさせられたことがないけど、先輩にさせられたやつがいると噂で聞いたことがある。
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