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第7話
幸司はジトッとした目を俺に向けてきた。
「……鈍チン」
そして感触のない手で俺の頭をなでると、そのまま髪の毛に口付ける。
「ずっと好きだった。慎がさ、俺に視線を向けてくるたびに、ちょっとだけ、つらかった。憧れてくれてても、恋愛感情とは違うってことが、なんとなくわかったから。俺の気持ちとは絶対に混ざり合わないんだって思い知らされるのは、つらかった。……好きなやつに何年かぶりに会えたのが自分が死んだ時なんて笑えないけど、慎が会いにきてくれて嬉しかったよ。ここまで言えば、同窓会の幹事やってたの、なんでかわかるだろ?」
俺の頬をつまもうとした幸司の指が、するりと体を抜けていく
「幹事やってたのは、俺に会うためってこと……?」
「そ。年に一度くらいは顔見たかったんだ。今日一緒に山登ってくれたみたいに、嫌々だけど、押されると結局最後まで付き合っちゃう優しいとこ、中学の時から好きだったな。……あと、顔、顔がすっげぇタイプ」
「顔っ?!」
ほだされそうだった俺の気持ちを返してくれ。
「ってのは、冗談で」
「だよね。いくらなんでも俺が好きとか、オ、オナニー見たいとか、冗談に決まって――」
「それは両方とも本気」
言葉をさえぎった幸司は、今度はすり抜けないようにそっと、俺の体を両腕で包み込んだ。
「一生で一度のお願い。俺、もう死んでるから、本当に一生で一度。見せてくれたら、絶対につきまとったりしない」
耳元で聞こえた声に切なさが滲んでいて、嫌だとは言えなかった。幸司が言うとおり、俺は押しに弱いらしい。
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