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第2話
昼休みが終わるギリギリまでのろけに付き合わされ、ようやく部署に戻る。
やれやれとパソコンを起動し、午前中から進めていた仕事の続きを始めたのだが……昼休みの頭痛は治まる気配はなかった。
あー……何なんだよ、もう!
イライラしつつキーボードを叩いていると…
「───田中」
頭痛の原因、長谷川が話しかけてきた。
「………何だよ」
思わず不機嫌な声になってしまったが、仕方がない。
俺はお前のせいで頭がガンガン痛むんだ。もうほっといてくれよ。
「お前さあ……顔赤いよ。熱があるんじゃないの?」
「───熱?」
………そういえば昼から痛み出した頭痛は時間が経つにつれ悪化しているようだし、何だか体もだるい気がする。
本当に熱でも出てるのかもしれない。
だが。
「熱ぐらい出ることもある。今、忙しいんだ。んなこと構ってられるか」
来週のプレゼンまでに資料を作り上げなければならないし、得意先から依頼された仕事にも期限がある。自分の体調なんてどうでもいい。
「………予想通りの返事だな」
「うるせえ」
「その仕事は俺が引き受けるから、お前はもう帰れよ」
「んなことできるわけないだろ。自分の仕事を放っておけるか」
「………ふーん。でも、今作ってる書類、ちゃんと見直してみろよ。誤字脱字だらけだぞ」
───はあ!?
慌てて画面を見直すと………確かに、ざっと見ただけでも間違いだらけだった。
「……………」
返す言葉もない。
「これ以上無理しても、意味ないと思うぞ。どうせやり直しが増えるだけだ………安心しろ。先週までサービス残業をしていたおかげで、俺の仕事には余裕がある。おとなしく帰れ」
そこまで言うと、長谷川は「───課長!」と大きな声で呼んだ。
「田中はどうやら高熱が出ているようです。確かまだ、有給休暇を全然消化してませんでしたよね」
「なんだ、田中は病気か。………そうだな、今から早退して明日明後日は休め」
こちらの気も知らない課長は、のんきな声で絶望的な命令を告げた。
「───え!そんなに休まなくても平気です!」
「いい、いい、無理しなくても。田中はずっと有給をとってなかったからな。まだ仕事に余裕がある時期だから、今のうちに休みをとっておけよ」
「よかったなー、田中!おだいじに」
憎たらしい長谷川の声に、くそー!とにらんでやるが、へらへらとした顔で受け流された。
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