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第3話

簡単に荷物をまとめて会社を出ようとすると、何故だか長谷川もついてきた。 子どもじゃないんだから一人で帰れるっつーのに…… 「ちゃんと、病院行けよ」 「いいよ、めんどくせー」 「なんでだよ。俺が連れてってやろーか?」 「断る」 「じゃあ、お見舞いに行ってやるから」 「もっと断る」 「……なんだよ、冷てーな。先月はさ、お前のおかげでやっていけたみたいなものだからさ。恩返ししたいんだよ」 さっきまでへらへらしていたくせに、急に真面目な顔になる。 ……まあ、うまくいかない辛さは俺もよく分かるからな。 「───どうしても見舞いに来たければ、彼女連れて来いよ。あの、自慢の彼女」 「は?なんだよいきなり!」 「あんなに毎日惚けてんだ。本当は紹介したいんだろ?見舞いに来るときは彼女とセットじゃなきゃダメだからな」 長谷川は途端に顔を赤くして「あー」だの「うー」だの言いだした。 まあ、今日一日、こいつのペースに乗せられた仕返しみたいなものだ。 おかげでちょっとすっきりする。 「そんなこと言ってるお前だって、見舞いに行ったら彼女が出てくるパターンじゃないのか?」 「───はあ?んなわけあるかよ」 そうだったら、ごねずにさっさと帰るわ。 だが、長谷川は納得がいかないようで…… 「お前、飲み会やら合コンやらめちゃくちゃ誘われてるのに断ってばかりだろ。本当はみんなに隠してるけど、そういう相手がいるんじゃないのか?」 まあ、いい線いってるけど、残念。 断る理由になっているやつはいるが、今となっては一方通行でしかない。 「そんな相手がいれば、お前のめちゃくちゃな飲みにはつきあわねーよ。んじゃな」 出口までたどり着いたところで別れる。 冬とはいえ日差しが眩しい。こんな時間に帰ることになるとは…… ふと振り返ると、長谷川がひらひらと手を振って見送っていた。

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