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第4話
帰りがけ、近所の病院に寄って診察を受ける。
熱は38度6分。
念のためインフルエンザの検査も受けたが、陰性だった。
結局風邪と疲れによる発熱だろうということになり、安静を言い渡され、薬をもらって帰った。
病院から歩いて5分、学生時代から住み続けているアパートにつく。
階段を上がって2階の角部屋が我が家。
もういい年だし、いい加減広めの部屋にでも引っ越そうと思っているが……踏ん切りがつかずに住み続けている。
鍵を開けて入ると、「おかえり」なんて言ってくれる相手は……もちろんいない。
ため息をついて荷物を床に置くと、帰り着いた安心感からかどっと体が重くなった。
ずるずると体を引きずって中へ入り、スーツを脱いで寝間着に着替えるとキッチンへ向かう。
絶対何か食べたほうがいいのだろうが、食欲がわくこともなく、薬だけを体に流し込む。
そのままベッドに倒れこむとぼんやり天井を見た。
『彼女』なんていない。
───正確に言うなら『彼氏』だ。
まあ、俺が抱くほうだったから『彼氏』というのも何だか違う気もするし、『恋人』というが正しいかもしれない。
だが、付き合っているのかと聞かれたら「分からない」と答えるしかない。
じゃあ、別れたのかと聞かれたら「別れたわけではない」と答えるだろう。
………もう2年近く、連絡をとっていないのだ。
すれ違ってしまったのに、明確な原因やきっかけはない。
ただお互いが忙しくなってしまった……それだけだと思う。仕事にかまけて、気づけば2か月連絡をとっていなかった。
しまった、と慌てて電話をしようとしたとき……今思えば、気づかなくてもよかったことに、ふと気づいてしまった。
自分が連絡を怠った2か月、恋人からも連絡がないことに。
思い返せばいつも、こちらからメールをしていたし電話をしていた。
───もしこのまま、俺から連絡をとらなければ、あいつはどうするんだろうか……
そんなどうでもいいことにとらわれて、連絡を待っていたらこの結果だ。
連絡はこない。
今さら連絡もできない。
一歩も動けなくなって、毎日毎日くすぶっている。
───もう、寝てしまおう。
考え出すと、余計に頭が痛くなる。
布団を頭までかぶると、ぎゅっと目を閉じた。
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