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第8話

「……な…んで……?」 人って、驚きすぎると声が出なくなるものなんだな。 2年ぶりの再会だというのに、まともなことが言えない。今までずっと、連絡すらなかったのに、どうして今ここにいるのか…… すると、葵はきょとんとした顔で答えた。 「……何で?……何でって、メールくれたから……熱、大丈夫?」 メール? メールって何だ?そんなもの、ここ2年ばかり送っちゃいないが? くらくらする頭をフル回転させて考えてみると───あっ、と思い当たった。 ちょっとごめん、と葵を待たせてベッドに戻り、放り投げたままのスマホを見ると…… 「………あー……やっぱり……」 ───やってしまった! 送るつもりなんてなかったのに。 投げたときに間違って当たってしまったのか……熱にうなされ、気の迷いで作ってしまったさっきのメールが、いつのまにか送信されていた。 まずい。これはまずいぞ。 まさか来てくれるなんて思ってもいなかったから、心の準備が全くできていない。 ………大体、あんなそっけないメール……2年ぶりに連絡したのがあれって、どうなんだよ。 あんなメール、俺がもらったなら、絶対イラッとする…… 本気でへこみつつ玄関に戻ると……さっきと同じ場所に、所在なさげに葵は突っ立っていた。 「あの……ちゃんとご飯食べた?いろいろ買ってきたんだけど……中に入っていい?」 そう言われてよく見ると、葵はスーパーの袋を手に持っていた。 わざわざ買ってきてくれたのか…… 方法はどうであれ、2年ぶりの再会には違いない。 あんな一方的なメールでも会いに来てくれたんだ。 相変わらず頭はずきずきと痛み、気分は悪いけれど、胸はじんわりと温かくなっていた。

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