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第10話
「───先輩。お粥できたよ」
そっと目を開けると、葵の顔がそこにあった。
お粥ができるまでの間、どうやら眠っていたようだ。
「熱、測れたの?何度だった?」
聞かれて思い出した。体温計を挟んだままだった。
慌てて服に手を入れて取り出すと……
「38度8分……熱、上がってるわ」
相変わらず熱は高いまま……というか少し上がっていた。
「そう……じゃあ、お粥を食べたら解熱剤飲もう?薬局の袋の中に一緒に入ってたから」
そう言いながら俺の体を起こす手伝いをすると、ヘッドボードにもたれさせて俺の膝にお盆をのせた。
小さめのどんぶりの中には卵の入ったお粥が湯気を立てている。
「冷蔵庫の中に卵が入ってたから卵粥にしてみたよ。熱いから気を付けて」
俺にレンゲを手渡すと「薬、用意してくる」と言って部屋を出る。
そんな一連のしぐさに少しも違和感がなくて、不思議だ。
本当に2年も会っていなかったとは思えない。まるで、昔にタイムスリップでもしたような気分だ。
粥を一すくいして口に入れると、優しい味が広がる。味気ないはずのお粥がおいしく感じるのは、自分が病気だからか……それとも葵が作ってくれたものだからか……
水の入ったグラスと薬の袋をもってキッチンから戻ってきた葵は、どんぶりの中身が減っているのを見てにこりと笑った。
「よかった。ちゃんと食べれたね」
ベットの横に座ると、ただにこにことしながら、何にも言わずに俺が食べるのを見ている。
こういうところも変わらない。のんびりしているというか、おっとりしているというか……
何かをしゃべらなくても、ただ横にいるだけで何時間でも過ごせる……昔もそんな関係だったな。
あっという間に食べ終わると、薬と水が差しだされる。
素直に受け取って口に含んだところで……
───ピンポーン……
またもや玄関のチャイムが鳴った。
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