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第11話

「……誰だろう?宅配業者かな……」 「あの……僕、出てもいい?」 「ああ、頼む」 俺の返事を聞いてから、すっと立って玄関に向かう。 ドアを開ける音がして……しばらくすると、さっきとは打って変わって暗い顔をした葵が戻ってきた。 「───どうした?誰だったんだ?」 こっちが不安になるほどの浮かない表情……どう見たって何かあったに違いない。 「……お客さん、来てるよ」 「客?」 「……うん……かわいい感じの男の子……僕、もう帰ろうか?」 ───まてまて。そんな客に覚えはないぞ。 何で2年ぶりに葵と会えた日に限って、そんなややこしいのが来るんだよ! 「いやいや!帰る必要ないから!───ちょっと待ってろ」 慌ててベッドから起き上がると、そのせいか頭がズキズキ痛む。 だが、のんびりはしてられない……どう考えたって誤解されている。 ふらふらしつつも何とか玄関までたどり着いて見てみると……確かに一人の男の子が居心地悪そうに立っていた。 ……えーと、どちら様だ? よく見ると、どこかで会ったような気もするし……かと言って、どこかと聞かれると思い出せない。 かける言葉が見つからず困惑していると…… 「……あのー、お久しぶりです」 見た目学生かと思われるその子は、俺に向かってぺこりと挨拶した。 お久しぶり? ということは、やはりどこかで会ってはいるのか? 「───すみません……どちら様ですか?」 「やっぱり覚えてないですよね……こちらこそ、急にすみません……」 申し訳なさそうにもう一度頭を下げると、ドアの後ろに向かって「やっぱり覚えてなかったよ?啓吾さん」と声をかけた。 ───ケイゴさん?『ケイゴ』っていったら…… 同じ名前で思い当たるやつの顔を思い浮かべたところで、案の定ひょっこりそいつがドアの向こうから顔を出してきた。 「───よう。言った通りに、見舞いに来てやったぞ」 「やっぱりお前か!長谷川!」 悪びれない顔でへらへらと笑っているのは、今日会社を早退させた張本人───長谷川啓吾だった。

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