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第12話
「お前……来るなって言っただろ!」
へらへらしている長谷川に向かって文句をいってやったつもりだが。
「いいだろ?心配してきたんだから。ほら、これ差し入れ」
全くこたえる様子もなく、平気な顔でスーパーのレジ袋を差し出した。
受け取ると中には飲み物やら食べ物やら……いろいろ入っているようだ。
心配してもらえるのはありがたい。───ありがたいが今は困る。今は2年ぶりの再会の、まさに真っただ中なんだ。
「……助かる。じゃあ、もういいだろ?」
さっさとドアを閉めようとすると……
「ちょっと待てよー。せっかく来たのにそれは冷たいだろ」
閉まりかけたドアを手で押さえて引き戻した。
「何だよ!こっちは病人なんだ。さっさと帰れよ」
「そんな大きな声が出るんなら、病人じゃないって」
「………………啓吾さん」
「無理して声出してんだよ!俺は気分が悪いんだ!」
「気分じゃなくて、機嫌だろ?」
「うるさい!ほっとけ!」
「………………啓吾さん」
「あーイライラするなあ……お前少しは感謝とかしろよ!」
「なんでお前に感謝するんだよ。来てくれなんて、一言もいってないからな、俺は!」
「本当にお前は素直じゃないなあ!だいたい……」
「───────啓吾さん!!」
二人で言い合いを繰り広げていると、その真ん中に挟まれていたさっきの男の子が、びっくりするほど大きな声で長谷川の名前を呼んだ。
その勢いに押されて、二人とも思わず黙る……
「……ここ、アパートの廊下だよ。場所を考えようよ!それに今何時だと思ってるの?近所迷惑です!」
「……………」
「……………」
「「…………すみません」」
───自分たちよりずっと年下の子に、思いっきり注意されてしまった……しかも、正論で。
返す言葉もなく、二人とも固まってしまった。
気まずい……
すると後ろから「───先輩」と、俺を呼ぶ声がする。
振り返ると葵が湯呑をのせたお盆をもって立っていた。
「お茶いれたよ。中に入ってもらったら?」
そう言って、ふわっとした笑顔を浮かべたので……それがあまりにも、かわいらしかったので……
すっかり毒気を抜かれてしまった。
「───仕方ないな…」
葵がそう言うなら…と、ドアを開けて二人を中に入れてやることにしたのだった。
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