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第14話

恋人?今、恋人って言ったか!? 長谷川の言葉を聞いて、改めて高瀬君の顔を見る。と……見ているこちらがかわいそうに思えるくらい、すっかり青い顔になっていた。 何度見ても、何度まばたきをしても、目の前にいるのは男で間違いない。 「お前……ゲイだったのか……?」 就職してから7年。ずっと一緒に働いてきた。 その間に何人かの女と付き合っていたのも知っている……まあ、長くもたずに別れてしまうようだったが。 このひと月はいろいろとあったが、何だかんだありながらも今の恋人とは長く続いているようだと思っていた……それがまさか、男と付き合っていたとは。 「……いや、どうかな。悠希以外の男には興味ないし。ゲイではないのかもしれないけど……」 長谷川は少し首をかしげたが、「悠希とは、ずっと一緒にいたいんだ」と、さらりと言って微笑んだ。 「……悪いな、急にこんな話して。でも、何があろうと一生一緒にいる覚悟ができたから、誰かに俺たちのことを知っていて欲しかったんだ」 それから、高瀬君のほうを向いて手を伸ばすと、髪をわしゃわしゃと撫でた。 「相談もせずにカミングアウトなんかして、ごめん。びっくりしただろ?」 すると、ふるふると首を横に振りながら、高瀬君は泣き始めた。 よしよしとなぐさめる長谷川とぽろぽろと涙をこぼす高瀬君は、素直にお似合いだと思った。 ───ちらっと葵の様子をうかがうと、優しい笑みを浮かべて高瀬君を見ている。 今、何を考えて二人を見ているのだろうか。 『一生一緒にいる覚悟ができた』と、そう言い切れる長谷川が、なんだかとても羨ましかった。

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