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第22話
電車に乗って最寄りの駅に着くと、駅前のコンビニに入って買い物をする。
カゴの中にスポーツドリンクや冷却シート、レトルトの粥などを次々投げ入れ、大急ぎでレジに向かう。
支払いを済ませると、葵の住むアパートまで走り出した。
記憶を頼りに道を進むと、所々街並みに変化はあるが迷うことなく目的地にたどり着いた。
階段を上がって葵の部屋があった場所へと向かうと、表札には「内村」の文字。
「………変わってない」
インターホンを鳴らす前に、走ってきて乱れた呼吸を整える。くずれた髪と服を直して、深呼吸。
───ピンポーン……
インターホンを鳴らした。
しばらく待ってみると、部屋の中からパタパタと音がする。
ガチャっとドアが開くと……中から、顔を赤くしていかにも熱がありそうな葵が姿を見せた。
「………いらっしゃい」
そう言ってドアを大きく開いたので、遠慮なく玄関に入ることにする。
「メール見た。これ、差し入れ」
コンビニ袋を差し出すと、「ありがとう」と言って受け取る。
「中にどうぞ……なんかね、風邪、うつっちゃったみたい。まいっちゃった」
そう言って笑って見せたが、見るからにしんどそうだ。
「……悪い。俺のせいだな」
「大丈夫、気にしないで。帰らないで泊まったのは自分で決めたことだから…先輩のせいじゃないよ」
──上がって…と、うながされて少しためらうが入ることにする。
しんどそうだし、話をするにはきつそうだけれど……どうしても聞かずにはいられないことがあったから。
早々に帰れるよう、さっそくだが聞いてみることにした。
「あのさ……前、俺の家に来たときにさ……『今度病気になったら、気になる人にメールしてみる』って言ってただろ……?」
部屋に進もうとしていた葵の足が止まる。
『あれって、もう試してみたのか』と尋ねるつもりだった。尋ねるつもりだったが……何も言えなくなってしまった。
靴を脱いで部屋に入り、顔を上げると……こちらを振り返って立ちつくした葵が、ぽろぽろと涙をこぼしていた。
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