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第32話
「───ということで、無事仲直りできたから」
休み明けの月曜日、昼飯を一緒に食べていた長谷川に週末の出来事を報告する。
「そうか……よかったな。ほっとしたよ」
長谷川はまるで自分のことのように喜んだ顔をしていて、何だかこちらも照れくさい。
長さこそ違っていても、どちらも恋人とすれ違い、なんとか無事によりが戻せたのだから、不思議なものだ。
「お前におごってもらえなかったのは残念だったがな」
「……ああ、あれね。俺はおごるつもりはなかったけど?」
「はあ!?だましたのかよ!」
何だよ、なぐさめてくれる気はなかったのか!?話が違うだろ!
思わず、目の前でのんきにうどんをすする長谷川をにらむと……
「いや、そうじゃなくってさ。うまくいくの、分かってたからさ」
「───何で!?」
「何でって……見るからに二人とも、相手のことが好きーって顔してたから。後できいたら、悠希もおんなじこと言ってたぞ」
「……………」
───何だよ、それ。
焦って、悩んで、苦しんで……でも、他人から見たら、そんなに分かりやすく表情に表れてたってさ……俺たち馬鹿みたいじゃないか?
でも……まあ……
長谷川を見ると、相変わらずにこにこしている。
誰かに真実を教えてもらうのではなく、自分で考えて動くことが、今の二人には必要だったのかもな……お互いに誤解して、動けなくなってたんだから……
「今度さ……」
「ん?」
「4人で飲みに行こうぜ?……葵の風邪が治ったら」
「いいね。仲直り記念だな、お互い」
これから先もいろいろ悩むことはあるだろうけど、きっとうまく乗り越えて行ける気がする。
離れていた分だけ絆は深まった気がするし……これからは相談する仲間もいるし。
……心配も不安もない。あとは……
───早く、葵の風邪が治らないかな。
end
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