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第2話

シャワーを浴びて心も体もすっきりさせると、部屋に戻る。 まだ、7時過ぎ。夜は長い。 昨日買った推理小説でも読もうかな……ミステリー大賞をとってデビューして4作目。トリックの秀逸さが売りだった作者なのに、前作はいまいちインパクトに欠けていた……今回の作品で真価が問われるだろうなあ…… 一日持ち歩いていたバッグから新書サイズの本を取り出すと…… ───ん? テーブルに置いたままだった携帯電話がメール受信を知らせていた。 本を置いて携帯を手に取る。 ……最近雇い始めたバイトの女子大生が、彼氏とデートのたびにシフトを無視して休むから困る、と店長が愚痴っていた。もしかしたら、今日も休んで……のヘルプを求めるメールかも。 明日は休みとはいえ、今から仕事なんて大変なんだけどなあ。 気は重いけれど無視するわけにはいかず、受信ボックスを開いてみると…… 「─────え?」 届いていたメールの送り主を見て、操作していた指が止まった。 「……………嘘、だ……」 手が……手が震える。見間違いじゃないかと思って、何度も何度もまばたきをし、何度も何度も画面を確認する。 でも、間違ってない。間違いじゃない! ───そこには「田中雅行」と……先輩の名前が2年ぶりに表示されていた。 「……どうしよう…」 怖い。開くのが怖い。 もし、お別れのメールだったら?結婚の報告だったら? そんなもの、見たくはない。 でももし、会いたいというメールだったら?やり直したいのだったら? 今すぐにでも、見たい。 どうしよう……どうしよう…… あんなに待ちわびていたメールなのに、いざ届くとこんなに迷ってしまうとは…… しばらく逡巡した後……結局開いてみることにした。 『風邪ひいて、熱が出た。  会いたい』 ……会いたい。 会いたいって書いてある。 「……………っ……ううー………」 足から力が抜けて、床にしゃがみ込んでしまった。涙が後から後からこぼれてきて、画面が全く見えない。 短いメール。相変わらずそっけない。そっけないけれど…… まだ、僕のことを覚えていてくれたんだ。 僕に会いたいと思ってくれたんだ……それだけで胸がいっぱいになる…… やっぱり好きだ…… 先輩が好き…… あきらめるなんてできないよ…… ……嬉しくて……嬉しくて……涙が止まらなくて……しばらくそこから動けなかった。

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