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第3話
ようやく涙が止まって、改めてメールの文面を読んで、息を飲んだ。
「会いたい」という言葉にばかり気をとられていたけれど、よく見ればそれだけではない。
「……『熱が出た』って、書いてある……」
先輩、病気なんだ!こんなとこでめそめそ泣いてる場合じゃない!
急いで服を着替えると、キッチンに駆け込む。
きっと先輩のことだから、面倒だといって何も食べずにいるに違いない。お粥とか作ってあげよう。
もともと自炊なんてしない人だったから、お米があるかも怪しいな……家から持っていこう。
それから……薄い味付け、苦手だったよね。お粥だって嫌がりそうだ……えーと……
棚をごそごそあさると、乾麺のうどんがあった……これも持っていこう。
家から持っていくものを袋にまとめると、今度はテーブルに座ってメモをとる。
……えーと、あと必要なものは……冷却シートでしょ……スポーツドリンクでしょ……
昔からぼんやりしたところがあって、おつかいを頼まれても買い忘れることも多くて…先輩は呆れてよく言っていた……「ちゃんとメモしてから買いにいけ」って……
言われたことができなくてがっかりされるのが怖くて、メモしてから買いにいく習慣ができて……それが今も続いている。
よし。これで買い忘れはしないはず。
玄関で靴を履いてドアを開ける前に、もう一度メールを確認する。
………うん、やっぱり「会いたい」って書いてある。
大丈夫。見間違いなんかじゃない。
画面の文字を指で撫でると、ドアを開けた。
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