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第5話
──────ピンポーン!
夜の静けさの中に高めの音が響いて、より胸が高鳴る。
……もう一度。
──────ピンポーン!
同じく音が廊下に響く。
ドキドキしながら、部屋の中の音に耳を澄ませると……
「──────あれ?」
………反応がない。
──────ピンポーン!───ピンポーン!
焦って思わず、何度も鳴らす。近所迷惑かも……という発想は少しも浮かばなかった。
嘘でしょ?この部屋じゃないの?
それともどこかに出かけてるの?
………もしかして動けないほど具合が悪いとか…?
──────ピンポーン!
何度目かの呼び出し音を鳴らしたところで…
「………は…い……今…ます……」
懐かしい声が、ドアの向こうからかすかに聞こえた。
……あ……よかった……ちゃんといる……
2年ぶりの声……大好きな人の、大好きな声……
返事がしてほっとしたのと同時に、インターホンを押していた指が固まって、胸のドキドキが信じられないくらい高まる……苦しい……
レジ袋を持った左手で何とか、固まった右手を押さえておろし、そっと深呼吸をする。
……大丈夫。メールには「会いたい」ってあった。
「会いたい」ってあった!自信をもって!
「───はーい、どちらさ……」
がたがたと部屋の中で物音がした後、玄関のドアが開いて……途中まで開いたところで、ぴたりと止まった。
中から出てきた人は、僕を見て、なぜか固まってしまった……
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