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第22話
「………うぅ……ひっく……うぅ………」
一人ぼっちの部屋でいくら泣いていても、誰にも声は届かない…
寂しい…
せめて夢の中で会えたらと思っていたのに、もう夢でも会えないなんて…
本当に、お別れなんだ…
「………会…いたい……会いたい、よう……」
こんなに切ない気持ちを抱えて、これからずっと一人で生きていかなきゃいけないんだ…
その途方もない時間を思うと、心が押しつぶされてしまう。
もっと僕に魅力があったならよかったのに……先輩が離したくないと思うくらいの…
ふと、先輩の部屋で会ったあの子を思い出した。
とっても素直で、可愛くて、でも芯の強いところもあって……あんなふうになれたら、好きになってもらえたのかな…
「一生一緒にいる」って、僕も言ってもらえたのかな…?
どうして僕は、あの子のようになれないのかな…
……みっともない。
僕は一度会っただけのあの子のことが羨ましくて、嫉妬してるんだ。
こんな僕のこと、誰が好きになってくれるというんだ…
醜い人間に手を差し伸べてくれる人なんて、いるわけないのに。
自分が情けなくて、ぎゅっと体を丸めて小さくなる。
自分で自分を抱きしめないと、心が壊れてしまいそうだったから…
『お前なら……きっとどんな相手だって振り向いてくれるよ』
ふと、先輩が最後に言った言葉が、頭の中に響いた。
確かに先輩はそう言っていた。
……どんな相手だって?
どんな相手だって、振り向いてくれるの?
だったら……先輩だって振り向いてくれる?
───冷静に考えたら、そんなの無理だって分かる。
あんなに長い間一緒にいたのに、僕は好きになってもらえなかった。
今さらどんなに頑張ったって、振り向いてもらえるわけないのに……
でも僕は、熱のせいで冷静に考えることができなくなっていて。
怖い夢を見たあとで、どうしても先輩に会いたくなっていて。
枕元に置きっぱなしになっていた携帯電話を手に取ると、メール画面を開く。
あの日、ちゃんと僕は言った……僕も今度病気になったら、『気になる人』にメールする、って。
だからメールしてもいいはずだ……僕の『気になる人』に…
でも、なんて送ろう。
何て送ったら、先輩の心を動かせるの?
考え出したら、一文字もうてなくって……ぐるぐる悩んで、先輩があの日くれたメールを開いた。
『風邪ひいて、熱が出た。
会いたい』
───そうだ。このメールを見て、僕の心は動いた。
だったら、このメールを見れば、先輩も心を動かしてくれるかもしれない……!
本文は編集せずにアドレスを入力し直して転送する。先輩の携帯へ……
お願い。
僕のこと、思い出して。
少しでいいから、僕のこと振り向いて。
メールを送ってほっとしたのか、そのあとはうつらうつらと夢と現実の間を行き来していた。
まだ、夢の中に先輩は現れてくれないけれど……もう、涙はこぼれなかった。
……先輩がくれた言葉を、僕は信じるんだ。
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