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第27話

すぅっと息を吸って、吐いて……深呼吸をする。 ……大丈夫。まだ先輩は目の前にいる。ちゃんと話を聞いてくれる。 聞いたら怒られるかもしれないけれど……でも、正直な思いをぶつけてみるんだ…… 「…………先輩は、ずるい…」 「───は?」 「いつだって僕を振り回して…好き勝手なことをして……大事なことは何も言ってくれない…」 「…………………」 「今回もそう……どうして2年ぶりにメールくれたの?熱が出て、誰でもいいから助けてほしかったから?それとも彼女と別れたから?」 「………彼女なんて…そんなの、いねーよ」 「じゃあ、何で連絡してきたの?……僕のこと、もういらないんでしょ?……だったらあのまま、ほっといてくれたらよかった……せっかく忘れようとしてたのに……あきらめようとしてたのに…」 そこまで一気に話をして……思わず「苦しい」と呟いてしまった。 涙が出そうになって、下を向いて必死に堪える。 泣いたら駄目だ……まだ、話は終わっていない。 「───待てよ。連絡を取らなかったのは、俺だけじゃないだろ?お前だってメールも電話もくれなかっただろ?……同じじゃないか」 何にもわかっていない先輩が、僕のことを非難した。 自分と同じだって。 「……同じなんかじゃない!……僕からメールなんて……電話なんて……そんなの……できるわけないよ……」 「何でだよ。それまで普通にやりとりしてただろ?」 「だって!………先輩からのメールも、電話も、『サイン』だったんだもん」 「───は?『サイン』?」 何のことだかさっぱりわからない顔で先輩は困惑している。 当然だ。 僕はずっと思っていたことを、今初めて話しているし…… きっと、恋愛に関して僕よりずっと鈍いこの人は、自分の行動にちっとも気づいていないんだ。 「そうだよ………『まだ、俺のそばにいてもいいよ』っていうサイン……」 そう言ってもちっともわかっていない表情の先輩に、なんだか切なくなってしまって、僕は無理に笑顔を作った。

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