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第12話
「───えー!無理っ!無理だよう!恥ずかしすぎて、死んじゃう!」
「……なんでだよ。昔は自分からしてただろ?」
「うー……だって、あの頃は何度もしてたから、特別って感じはなかったし……」
「……へー……特別じゃなかったんだ……ふーん……じゃあ、今さらキスなんて、いくらしたって平気だろ?」
「平気じゃないよ!ずっとしてないから、免疫が低下してるし!」
「なんだそりゃ!俺とのキスは病気か!?だいたい寝てる間にしたんだろ?ずっとしてないとは言えないだろ」
「───うっ!…………うー……」
とうとう、葵は言い返せなくなった……俺の勝ちだな。
ほれ、と自分の口唇を指さしてやる。いいからあきらめて『キスしろ』。
どうにもできなくなった葵は、手のひらを団扇の代わりにしてパタパタ……でも、そんなものでは顔の赤みは取れるはずもなく。
「…………わかった。じゃあいいや、キスしなくても」
いつまで待っても心が決まらないようなので、一度引いてみる。「俺、もう寝るわ」なんて、ちっとも思ってないことを言ってやると……
「───やだ……寝ちゃ、やだ……」
葵はぎゅっと俺の袖を掴むと、立ち上がろうとする俺を引きとめた。
辛うじて泣いてはいないが必死の表情……この駆け引きは、俺の勝ちだな。
もう一度、自分の口唇を指さしてうながすと…
「……目……閉じてて……」
恥ずかしそうな声で言うので……しかたない。ここは譲歩して、目を閉じてやる。
しばらく待っていると、そろそろと近づく気配がして……そっと口唇に柔らかい感触が触れたかと思うと、さっと去って行った。
「………で、この後は?」
「この後、って?……ちゃんとキスしたよ」
「はあ?今のでおしまい?俺たち中学生じゃないんだぞ!」
今どき中学生だって、もっとがっつり濃いキスするわ!──いや、知らないけど!
それを聞いて「子どもじゃないし!」とすねる葵のほっぺたが子どもみたいにぷっくりとふくらんでいて、それがあんまりかわいすぎるから……まあ、もういいか。
ひょいと脇に手をやってその細い体をもちあげると、俺の膝の上にのせてやった。
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