79 / 243
第17話
「───はぁ!?」
何だよ、これ。どんな状況だよ!
右手にローション、左手にコンドーム…ヤル気満々な俺に対して、相手は毛布を頭から被って、ベッドの上で籠城中……ってこれ、地獄絵図だろ。
さっきまであんなにかわいく声出してただろ!?
嫌がるどころか乗り気だっただろ!?
何で振り返ったらこんなことになってるんだよ!?
毛布の隙間から、ひくひくとしゃくり上げる声が漏れてくる。葵、泣いてるし……
「……………」
手にしていた生々しいアイテムをぽいっとベッドに放り投げると、自分の頭をわしゃわしゃとかき回した。
……どこで間違えたんだ?俺。
焦りすぎたのか?押しが強すぎたとか?
それとも、いざ挿れる準備をするとなったら、やっぱり怖くなったのか?
あー……やっぱり俺じゃ駄目だったのか…?
……俺、鈍感だもんな。
喜ばせることだって、甘やかしてやることだって、恥ずかしくってちっともできないし。
それこそ、さ……長谷川みたいなやつと付き合ったほうが、ずっと幸せになれるに決まってんだ。
ラーメン屋で嬉しそうに食べる顔。
俺に呼ばれて、ふにゃりと笑う顔。
それよりも、もっともっとたくさん笑わせてやれるやつが、きっと他にいるはずなんだ。
葵はいつだってかわいくて素直で眩しくて、本当は俺なんかじゃ手の届くはずがない……「高嶺の花」なんだから。
「………ごめんな、葵……」
「………」
なんで泣いているのか、分かってあげられなくてごめんな。
泣かせてばっかりでごめん。
幸せにしてやれなくてごめん。
……やっぱり、やり直すのは無理、なんだろ?
「……今日はもう寝るか……風邪、ぶり返すといけないからさ。服だけは着ろよ……」
んで、明日ちゃんと話し合おう。
寝るまでにはきちんと、覚悟を決めておくから……
床に落としていた葵の寝間着を拾い上げようとしたとき、毛布の中から微かな声が聞こえてきた。
「……先輩…の……ひぃっく………嘘、つきぃ……」
ともだちにシェアしよう!