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第17話

「───はぁ!?」 何だよ、これ。どんな状況だよ! 右手にローション、左手にコンドーム…ヤル気満々な俺に対して、相手は毛布を頭から被って、ベッドの上で籠城中……ってこれ、地獄絵図だろ。 さっきまであんなにかわいく声出してただろ!? 嫌がるどころか乗り気だっただろ!? 何で振り返ったらこんなことになってるんだよ!? 毛布の隙間から、ひくひくとしゃくり上げる声が漏れてくる。葵、泣いてるし…… 「……………」 手にしていた生々しいアイテムをぽいっとベッドに放り投げると、自分の頭をわしゃわしゃとかき回した。 ……どこで間違えたんだ?俺。 焦りすぎたのか?押しが強すぎたとか? それとも、いざ挿れる準備をするとなったら、やっぱり怖くなったのか? あー……やっぱり俺じゃ駄目だったのか…? ……俺、鈍感だもんな。 喜ばせることだって、甘やかしてやることだって、恥ずかしくってちっともできないし。 それこそ、さ……長谷川みたいなやつと付き合ったほうが、ずっと幸せになれるに決まってんだ。 ラーメン屋で嬉しそうに食べる顔。 俺に呼ばれて、ふにゃりと笑う顔。 それよりも、もっともっとたくさん笑わせてやれるやつが、きっと他にいるはずなんだ。 葵はいつだってかわいくて素直で眩しくて、本当は俺なんかじゃ手の届くはずがない……「高嶺の花」なんだから。 「………ごめんな、葵……」 「………」 なんで泣いているのか、分かってあげられなくてごめんな。 泣かせてばっかりでごめん。 幸せにしてやれなくてごめん。 ……やっぱり、やり直すのは無理、なんだろ? 「……今日はもう寝るか……風邪、ぶり返すといけないからさ。服だけは着ろよ……」 んで、明日ちゃんと話し合おう。 寝るまでにはきちんと、覚悟を決めておくから…… 床に落としていた葵の寝間着を拾い上げようとしたとき、毛布の中から微かな声が聞こえてきた。 「……先輩…の……ひぃっく………嘘、つきぃ……」

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