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第20話

「───そ、そ、そ、そんなこと、ないもん!買ったこと、くらい……あるし!」 「……はいはい。別に買ったことなくたっていいんだよ。ずっと俺が用意してたんだから、お前がわざわざ買う必要なかったしな」 それこそ本当に「買ったことがある」って言うんなら、使った相手は誰なんだ!ってことになるからな。 今度は俺が泣くっての。 「じゃあさ、コンドームって何でできてるか、知ってるか?」 「……え?……えーと……ゴム?」 ちょっと恥ずかしそうに顔を赤くして葵が答える。 何で照れるかね……「ゴム」って言ったくらいで… さっきから「コンドーム」だの「ローション」だの、思いっきり言いまくってるっていうのに。よっぽど直球の単語だろ。 というか、俺たちこのケンカ?の間ずっと、真っ裸なんだけど? ……そっちのほうがよっぽど恥ずかしいけどな、俺は。 「そう、みんなが『ゴム』『ゴム』言う通り、ゴムラテックス製だな。まあ、最近は違う素材も出てきてるみたいだけど、それはとりあえずおいとく」 ゴムアレルギーなんてものもあるらしい。そんな人でも使える素材ってことだな……まあ、俺も葵もありがたいことに該当はしない。 「じゃあさ……ゴムって劣化するって知ってるか?」 「劣化?」 「そ、劣化。置いといた輪ゴムを使おうと思ったら、ぷつりと切れることあるだろ?あれだよ」 葵がくりくりした瞳でこちらを見て、こくりとうなずいた。 ……あーもー、かわいいなぁ…… 「コンドームはゴムでできている。ゴムは時間が経つと劣化する。簡単な三段論法だろ?」 「…えーと、つまり……『ゴムでできたコンドームは劣化する』ってこと?」 「正解。コンドームには使用期限があるんだよ。で、2年前に使ってたコンドームはもう古くなってたから捨てて、新しいものを買ったわけ」 「ちょっと、待って!じゃあ、ローションは?ローションも使用期限があるの?」 「いや、特にはないと思うけど……お前、2年前に使って開封済みのまま放置してたローション、体の中にいれるの平気か?」 「……それは……ちょっと……」 「だろ?雑菌とか心配だし、質は悪くなってるだろうし……そんなものお前と使うわけにはいかないだろ。だから新しく買ったの」 つまり新しく買ったのは使いきったからじゃなくて、俺の思いやりってこと。 「………でも、新しいって言ってたけど……ローションの量、減ってるよ?」 ───うっ。 何もかも疑問だらけの葵は、俺としては一番触れてほしくないところまで追及してきた… 「……それはまあ、あれだ。冬だからさ……寒いし、冷たいの嫌だろ?だからさ、温感タイプを買ってみたわけ…」 「……温感…?」 「……で、どのくらい温かいのかなーと思って……一人で使ってみた、みたいな?」 また、昔みたいに付き合うようになったら……当然、そういうこともするようになるだろうし? そしたらまあ、絶対に必要になるものだし? いきなり葵の体に使うよりさ、一度自分で試してみたほうがいいだろ…? 「……一人で使うって……どうやって使ったの?」 きょとんとした顔で、さらに痛いところをついてくる。 一体どっちが鈍感なんだよ……さっきまではしなくてもいい想像をじゃんじゃん飛躍させていったくせに、何でこういうときにはひらめかないんだよっ! 「どうやって、って……そりゃあ……あれだよ」 「……『あれ』って何?」 「だから、その………ニー……」 「え?何?……全然聞こえないんだけど…?」 ───こいつ!わざとやってんのか!? っていうか、わざとじゃないからたちが悪い! 絶対聞いたら、俺より恥ずかしがるくせに!! 「だー!かー!らー!───オナニー!!……ローション使って、自分のモノをぬるぬるにして、オナニーしたの!」 どうだ!望み通り、はっきり言ってやったぞ! おかげで俺は、立ち直れないほどのダメージ受けたけどなっ! 情けなくて、泣きたいわっ! ───で、葵はというと…初めはぴんと来なかったようだが、次の瞬間、ぼん!っと音がしそうなくらい顔を真っ赤にして驚いた。 ……ほらみろ。俺より恥ずかしがってるし。 仕返しに、さらに追い打ちをかけてやる。 「ちなみに、そのときの俺の『おかず』――お前ね」 「──────ふぇっ!」 どこからでたのか分からないような変な声を出して、葵がさらに驚いた。 ───こうして俺は、何とか無事に?誤解を解くことができたのだった……

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