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つながる 第1話
悠希君と再会したあと、僕は街を一人で歩き回った。
楽しくおしゃべりをし、二人の幸せな出会いの話を聞いて……なんだか誰もいない部屋に帰るのが寂しかったから。
年末が近づいて先輩も忙しくしていたし、僕の仕事も子ども向けの本がよく売れるので、クリスマス包装とか増えていたし……最近会えていない。
2年も会わずにいたのだから、このくらい平気だと思っていたけど……僕は少し贅沢になってしまったようだ。
「……会いたいなあ……」
ぽつりとつぶやいた言葉にこたえてくれる人はいない。
お互い社会人なんだし……仕事は全力で取り組まなきゃいけないし……そんなことは分かっているんだけど……やっぱり、会いたい。
寂しくなった気持ちをごまかすように、僕は巻いていたマフラーをぎゅっと握った。
これは昔、先輩がくれたマフラーで、ずっと大事に使ってきた宝物……それになぜかこの前、先輩が知らないうちに借りていってて……さらに特別なものになってしまった。
大丈夫……こうして先輩を感じることができるから、僕は大丈夫……
電車に乗って家の近くの駅に着くと、スーパーやコンビニには寄らず、まっすぐ家に向かう。
今日はもうこのまま、家でごろごろしてしまおうかな…
とぼとぼと家までの道を歩き、アパートにたどり着くと階段を上る。1階に2世帯、2階に2世帯が入れるこじんまりとしたアパートの、2階の左の部屋が僕の部屋。
ポケットの中から鍵を取り出しながら階段を上がると…
「……………あれ?」
ドアノブに、白いビニール袋がさがっていた。
───何だろう。
朝、家を出るときにはこんなもの……なかったのに。
怪訝に思いながら袋を手に取り、中を覗く。すると…
「……え……先輩…?」
一度袋をドアノブに戻すと、慌てて携帯電話を取り出す。
画面を確かめてはみたけれど……着信も、メールも、どちらも何も残ってはいない。
でも、間違いないと思う。
きっとこの袋は先輩が残したものだ。
僕がいないから、置いて帰ったに違いないんだ!
階段を引き返して道に戻り、きょろきょろと探してみる。
まだ近くにいたりしないかと思って……けれど、そこに先輩の姿はなかった…
ここへ帰りつくまでの道でも、すれ違うことはなかった……ということは、もう…
もう、帰ってしまったの…?
また、巻いていたマフラーを握る。握るけれど…胸の痛みは治まらない。
せっかく会いに来てくれたのに…何でこんなことになっちゃったんだろう…
忙しいはずの先輩から、会いにきてくれたのに…
先輩が僕のこと…思い出してくれたのは間違いないんだ。
だって袋の中に入っていたのは、僕の大好きな『なめらか生クリームプリン』だったのに…
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