99 / 243

つながる 第1話

悠希君と再会したあと、僕は街を一人で歩き回った。 楽しくおしゃべりをし、二人の幸せな出会いの話を聞いて……なんだか誰もいない部屋に帰るのが寂しかったから。 年末が近づいて先輩も忙しくしていたし、僕の仕事も子ども向けの本がよく売れるので、クリスマス包装とか増えていたし……最近会えていない。 2年も会わずにいたのだから、このくらい平気だと思っていたけど……僕は少し贅沢になってしまったようだ。 「……会いたいなあ……」 ぽつりとつぶやいた言葉にこたえてくれる人はいない。 お互い社会人なんだし……仕事は全力で取り組まなきゃいけないし……そんなことは分かっているんだけど……やっぱり、会いたい。 寂しくなった気持ちをごまかすように、僕は巻いていたマフラーをぎゅっと握った。 これは昔、先輩がくれたマフラーで、ずっと大事に使ってきた宝物……それになぜかこの前、先輩が知らないうちに借りていってて……さらに特別なものになってしまった。 大丈夫……こうして先輩を感じることができるから、僕は大丈夫…… 電車に乗って家の近くの駅に着くと、スーパーやコンビニには寄らず、まっすぐ家に向かう。 今日はもうこのまま、家でごろごろしてしまおうかな… とぼとぼと家までの道を歩き、アパートにたどり着くと階段を上る。1階に2世帯、2階に2世帯が入れるこじんまりとしたアパートの、2階の左の部屋が僕の部屋。 ポケットの中から鍵を取り出しながら階段を上がると… 「……………あれ?」 ドアノブに、白いビニール袋がさがっていた。 ───何だろう。 朝、家を出るときにはこんなもの……なかったのに。 怪訝に思いながら袋を手に取り、中を覗く。すると… 「……え……先輩…?」 一度袋をドアノブに戻すと、慌てて携帯電話を取り出す。 画面を確かめてはみたけれど……着信も、メールも、どちらも何も残ってはいない。 でも、間違いないと思う。 きっとこの袋は先輩が残したものだ。 僕がいないから、置いて帰ったに違いないんだ! 階段を引き返して道に戻り、きょろきょろと探してみる。 まだ近くにいたりしないかと思って……けれど、そこに先輩の姿はなかった… ここへ帰りつくまでの道でも、すれ違うことはなかった……ということは、もう… もう、帰ってしまったの…? また、巻いていたマフラーを握る。握るけれど…胸の痛みは治まらない。 せっかく会いに来てくれたのに…何でこんなことになっちゃったんだろう… 忙しいはずの先輩から、会いにきてくれたのに… 先輩が僕のこと…思い出してくれたのは間違いないんだ。 だって袋の中に入っていたのは、僕の大好きな『なめらか生クリームプリン』だったのに…

ともだちにシェアしよう!