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第4話

僕の髪を撫でる感触。何度も…何度も… 「………葵…」 僕の名前を呼ぶ、少し低めの声。 ああ……先輩の声だ。 僕ね……先輩の声を聞くだけでね……幸せな気持ちになれるんだ…… 「………葵………葵…」 あー……どうしよう……先輩に会いたくなってきちゃった…… 会いたいなあ……会いに行ったら、喜んでくれないかなあ…… ぎゅってしてほしいよ…… 先輩……先輩…… 「………葵?……起きたのか?」 うっすらと目を開けると、ぼんやりとした人影……これって…… 「……………先…輩…?」 そこには、大好きな先輩の顔があった。 ……あれ?まだ夢を見てるのかな…… そっと手を伸ばして、目の前の顔に触ってみると……ちゃんと柔らかい感触がした。 「……あれ?……本物?」 目の前にいるのは、本物の先輩だった。 ─────って………何で!? がばっと起き上がって、周りをきょろきょろと見る……何度見てもここは、実家の和室で。 「───何で先輩、ここにいるの!?」 目の前にはきっと仕事帰りなのだろう、スーツ姿の先輩が畳に座っている。 今までに一度だって、先輩はこの家に来たことないのに……何で今、ここにいるの? 「……お前昨日、『明日は実家に帰る』って言ってただろ?だけど、なんだかそわそわしてたし、夜も眠れないようだったから心配でさ…」 ………先輩、僕が眠れなかったこと、気づいてたんだ… 「もしかしたら、俺と同じようにカミングアウトするつもりなんじゃ……と思って。お前、家族のこと、とっても大事にしてるだろ?それなのにさ……もし、拒絶されたり非難されたりしたら、立ち直れないんじゃないかと思って……仕事終わったらすぐに電話したんだ」 話をしながら先輩は僕の頬を撫でて、寝乱れた髪を整えてくれた。 その手の感触が優しくて……先輩が僕のこと、ずっと心配してくれていたことが分かって……何だかくすぐったい。 「そしたらお前じゃなくてお前の姉さんが出るし……聞けば倒れたって言うし……もう気になって仕方なくってさ……で、迎えに来た」 「迎えに?来てくれたの?……僕を?」 「ああ……お前が寝てる間にさ……ちゃんとお前の家族には、これまでのことを説明したから……だから安心していい。帰ろうぜ」 そう言って先輩は僕のおでこにキスをした。 「帰ろう」って言葉が、胸をぐうっと締め付ける… 口唇が触れたところから、じわじわと熱が伝わるような気がして、僕は思わず涙をこぼした…

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