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第4話

「……お前、本当に会いに行かないの?」 忙しい年末だというのに、今日は早く帰りたいと思っている社員が多かったからか?ここ最近では珍しく、定時に退社できた。 クリスマスイブだからか、駅に向かう人々の足も何だかせわしない。 そんな中、タイミングが重なって一緒に駅に向かって歩いている長谷川が、またもやしつこく尋ねてきた。 「だーかーらー……約束なんてしてねーし。会わないのは毎年のことだし。俺たちにとっては、これが普通なの!」 「そりゃあ、これまでは普通だったのかもしれないけれどさ……今年は特別だろ?」 「特別って?」 「せっかく再会して、やり直せて……初めて迎えるクリスマスだろ?……葵君だって、二人で過ごしたいと思ってるんじゃないか?」 「……んなこと言ったって、あいつも今日は仕事だし……会いたいとか、一言も言わなかったし…」 「だってさ。そんなこと考えてても自分からは言わないのが葵君なんだと、俺は思うんだけど」 「それは………」 全くもってその通りすぎて、何も言い返せなかった。 確かにあいつは何でも腹にためこんで……自分が我慢すればいいと……それが俺のためになるんだと……いつもそんなことを考えてばかりだ。 じゃあもしかして、今も我慢してるっていうのか? ……本当は俺に会いたいと思ってるっていうのか? 長谷川と話している間に、駅に着いた。 俺たちの乗る電車は別々だから、改札を通るとそれぞれのホームへ向かう。 別れ際、俺の肩をぽんと握りこぶしで突くと、長谷川は一言。 「……お前ら二人のことだから、俺はもう、これ以上は何も言えないけど……後悔するくらいなら、ちゃんと動けよ、田中。……じゃ、メリークリスマス!」 おせっかいな男は、片手をあげると足早に去っていった。 きっと家では恋人が待っているのだろう。 「……………メリークリスマス」

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