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第8話
クリスマスが嫌いになったのは、いつからだったかな……
昔はとっても楽しみにしてた。
家族みんなで食べるケーキも、サンタクロースが届けてくれるプレゼントも、わくわくしてたまらなかった。素直な子どもだった頃は、サンタクロースが来てくれるように、いい子でいようと頑張ってたなあ……
でも、今は嫌い。
僕がどんなにいい子にしてたって、本当にほしいものはプレゼントしてくれないもん。
僕のほしいもの……もうずっと、一つだけ。
ううん、一人だけ……
なのにサンタは届けてくれたこと、ないんだ。
ちゃんと、分かってる。クリスマスを一人で過ごさなくちゃいけなくなったは、僕が仕事と恋愛を両立できなかったからで。
『クリスマスに無理して会うのはやめよう』って言ったとき、先輩がとってもつらそうな、悲しそうな顔をしていたことも知ってる……知ってるけど……でも……
ふわふわする頭とぽかぽかする身体……だんだん力が入らなくなってきて、閉じていた瞳を何とかこじ開けると、あいかわらず缶のサンタがこっちを見てた。
……ちゃんと、いい子にしてるよ。
仕事も頑張ってる。わがままだって言わないようにしてる。困っている人がいたらね、できるだけ助けるようにしてるよ。
だから……だからサンタさん。
今日くらい僕にも、プレゼントをちょうだい?
でももちろん、こんな僕のところにプレゼントが届くはずもなくて……あいかわらずサンタはいじわるそうな笑顔のまま。
「………サンタさんのいじわる……けちぃ……」
残りがわずかになった缶をつんつんとつつくと、何だか涙が滲んできた。
平気なふり、してきたのに……もう、そんなふりをするのも限界みたい。
「………会いたい………」
思わず本音がこぼれ落ちて……サンタがじわじわと歪んで見えてきて、苦しくなって僕は目を閉じた。
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