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第12話
冷蔵庫に入っていたのは、イチゴののったショートケーキだった。
さっき卵やネギを取り出すときには気づかなかったけれど、改めて見るとキラキラと光っているように、特別なもののように思えた。
テーブルの上に置いて、そうっと蓋をとるとイチゴの甘酸っぱい匂いがする……どうしよう。もったいなくて食べれないかも……
ケーキを前に、僕が一人であわあわしていると、先輩が部屋のすみに置いていたらしいコンビニのレジ袋を持ってテーブルにもどってきた。
「……あのさ、これもやる。大したものじゃないけど、プレゼント」
そう言って袋から取り出したのは…
「───サンタさんの、靴?」
赤いサンタのブーツの中には袋詰めのお菓子がぎっしり……子どもの頃には、買ってもらえるのを楽しみにしてた懐かしいお菓子のセット。
「コンビニで見つけてさ……何だか懐かしくなって……俺、子どもの頃によく買ってもらってたんだよなぁ」
「うん」
「俺んち3人兄妹なんだけど、親がちゃんとひとり1つずつ買ってくれて……それがすげー楽しみで、貰うと嬉しかったんだ……思い出したらお前にもあげたくなっちまってさ……」
今さらこんなの……って思うけど、なんて言いながら、先輩がこちらをうかがう。
「……ありがとう……開けてみていい?」
どうぞと言うように、ブーツの上についている白い紐が差し出されて、リボン結びをほどくと小さなお菓子の袋がこぼれ落ちた。
触ってみると中身は何だかでこぼこしていて……開けてみるとそれは、サンタの形をしたチョコレートだった。
いたずら心で、さっきのショートケーキにのせてみる。
「……かわいい」
ますますクリスマスにぴったりのケーキになって、嬉しくなった。
「来年はさ……ちゃんとケーキを予約しようぜ」
…………え?
耳に入ってきた「来年」という言葉に驚いて顔をあげると、先輩は顔を赤くして目をそらしていた。
……来年……今、来年って言った?
来年も一緒に……クリスマスを過ごしても、いいの?
僕と一緒に、過ごしてくれるの?
今日何度目だろうか……またじわじわ涙が出てきて、こんなに泣いてばかりだと、さすがにそろそろあきれられてしまうかも……
心配になって、ごまかすように話を続ける。
「じゃあ、来年のケーキは僕が作るよ!」
「え?お前、ケーキなんて作れるの?」
「うん。スポンジケーキだけ買ってもいいし、日もちするケーキを作っておいてもいいし……クリスマスに仕事が入ってても、今ならちゃんと準備できるよ」
「………そうか…」
何だか嬉しそうに微笑んだ先輩の顔を見ながら、幸せな気分でケーキを一口食べる。
それは今まで食べた中で、一番おいしいケーキだった。
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