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第2話
──結局、初詣は1日の午後に行くことになった。
さすがに怒るかな、と思っていたが……それぞれ1回ずつ射精したあと、葵は俺の腰に足を絡めて2回目をねだったから、まんざらでもなかったんだと思う。本人には聞けないけどな。
初詣に足を運んだ神社は、葵の家から15分歩いたところにある。普段は参拝客もいなくて、神主もほとんど見かけないが、正月は別だ。
拝殿では何人もの人が列を作って、参拝の順番を待っている。俺たちもその列の最後尾に並んだ。
「先輩、もしかして去年は初詣も…?」
「ああ、行ってない。家でごろごろしてた」
「そうなんだ…」
「お前は?こういうの、欠かさないタイプだろ」
「うん。毎年ちゃんと行ってたよ」
やっぱりな。パワースポットとか、好きそうだもんな。
「で、何て祈ったんだ?」
「へ?」
「だから、何をお願いしたんだ?去年も初詣に行ったんだろ?ちゃんと叶ったのか?」
「え…と───うん」
おっ、願いは叶ったのか。
葵は肯定の返事をすると、少し顔を赤くした。
「どんな願いだったんだ?」
「え?」
「だから、どんな願いが叶ったんだ?もう叶ったんだし、去年の願い事だから話しても平気だろ」
「えーと…」
「何?言えないようなことか?」
「言えない……ことは、ないけど…」
じわじわと列は進んで聞くが、葵の口は重い。
言えないことはないけど言わないのは、言うと恥ずかしいこととか?言うと俺ががっかりすることとか?
まあ、言いたくないなら別に言わなくったっていいんだ。話を変えようかと口を開いたところで葵がぽつりと言った。
「────うに」
「ん?何て言った?」
あまりに小さな声だったので、聞き取れなくてもう一度聞き返す。
「だからっ!………ように」
「何だよっ。肝心なところが小さくて聞こえねーよ!」
「だーかーらっ!『もう一度先輩と会えますように』ってお願いしたの!」
「………あっ……あ……ああ……それは、確かに、叶ったな…」
そうか。
今はこうして隣にいて……で、それが当たり前のようになりつつあるけれど、去年はずっと離れ離れで。俺が葵に会いたいと思っているとき、葵もまた俺に会いたいと思い続けてくれていたんだった……
らしくない大きな声を出したのが恥ずかしかったのか、葵は顔を真っ赤にしている。そのゆでだこの手をぎゅっと握った。
「わっ───先輩、ここ、外っ!」
人目を気にして手を振り払おうとするから、さらに力をこめて握る。他人なんか関係ない。見たいヤツには見せてやればいい。
「……………」
「……………」
葵も俺も、何にも言わずに……手をつないだまま、列は少しずつ前へ進む。
一歩……また一歩……
『これからもずっと、二人でいられますように』
俺は今年、そう願おう。
そしてきっと、葵の願い事も同じだ。そんな気がする。
横に並ぶ葵を見ると、葵も俺を見てふにゃりと笑った。
今年はそんな笑顔が、たくさん見られるといいな。そう、心から思った。
end
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