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第9話
日曜日の早朝。駅までの道は、誰も歩いていなくて。
僕と先輩と……二人で並んで歩く。
「昨日はさ……ごめんな。無神経なことばっか言って」
「あ、あのっ、気にしないでっ……お返しとか、面倒に思う気持ちは分かるから」
「あれはさ……なんとも思ってない相手からもらうチョコの話で……好きなやつから……葵からもらうチョコは、ほら……別だから」
「………うん」
「チョコ、ありがとうな」
「ううん……僕の方こそ、ありがと…」
「あれ、手作りだろ?めちゃくちゃうまかった」
「ほんと?よかったぁ!」
「でも、まだ1個しか食べてないからさ……残りは今夜、食べに来いよ。明日はお前、休みだろ?」
「……え……家に行ってもいいの?」
「当たり前だろ?でも、来るときはちゃんと連絡しろよ。家までの道、暗いんだからさ。駅まで迎えに行くから。一人で歩いたら危ないだろ」
「………先輩……僕、男だよ?」
「んなの、関係ねーの!心配して当然だろ!?恋人なんだからさ!」
「あ……………うん………次は、ちゃんと連絡するね」
「……………おう。頼む」
駅に着くと改札を抜けて、同じホームに立つ。しばらく待ってやって来た電車に一緒に乗り……先輩は乗り換えのために、僕より前の駅で電車を降りた。
電車の窓から手を振ると、先輩も小さく手を振り返してくれた。
ここまで一緒に電車に乗って……先輩といろいろおしゃべりできた。
先輩が昨夜調べたところによると、バレンタインって……日本では女の人から男の人にプレゼントしているけれど、世界では逆だったり恋人同士で贈りあったりするところも多いんだって。
だから、来年はチョコにこだわらないで、何かプレゼントしてくれるって……
別に、プレゼントが欲しいわけではないけれど……「来年は」って言葉が、来年も一緒にいられる約束みたいで、幸せ。
「よーし、がんばるぞっ!」
忙しい日曜日の仕事も、今ならいくらでも頑張れるような気がした。
end
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