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第12話

後部座席で熟睡していた二人が起きたのは、高速道路を降りて車が下道を走っているときだった。 田中さんは運転を代わると申し出たけれど、啓吾さんは「とりあえず目的地の神社に着いてから」とそのまま運転を続けている。 辺りの景色が山がちになって、新緑の鮮やかさに目を奪われていると「湯之露温泉」の看板が出てきた。 今回の僕たちの旅行の計画では、まず温泉街の中にある神社、白露神社に参拝。そのあと参道のお店を散策してから宿へ移動。そのあとは旅館でのんびり過ごすということになっている。 ナビに従いながら何度か曲がり角を曲がり進んでいくと、神社の駐車場の看板が出てきた。 その駐車場に車を停めて外に出ると、うーんと伸びをした。緑がいっぱいだからか、空気が美味しい気がする。 「結構車停まってるな。人気あるのか?この神社」 「うーん……よく分からん」 「……先輩、この神社ね、パワースポットだって最近注目されてるんだよ」 「そ…う、なのか?」 「お前、そんなことも知らないで計画立ててたのかよ……」 「別に知らなくっても問題ないだろっ。チェックインの時間までのつなぎだしっ」 田中さん、顔赤くなってる… 最初に会ったときは体調悪いときだったし、啓吾さんとケンカ?してたし、何だか怖い人なのかなー…って思ってたけど、何だかイメージ崩れてきてる。 こういうところも、葵君は好きなのかな?たまに見る啓吾さんの子どもっぽいところ、僕も好きだし。 「で、葵君。ここの神社の御利益って何?」 「あー……すみません。さすがにそこまでは…」 ご利益……何にきく神社なんだろ、って思いながら歩いてたら……あ、看板発見! 「啓吾さん、ここに書いてあるよっ。えーとね……『健康』に『長寿』……あと、『子作り』?」 古い看板で途中から文字がうっすら消えている。何とか読み上げてみたら……3人ともぎょっとしてる。 「え?何?」 葵君なんか、顔赤いし… 「悠希、読み間違ってるよ。これ、『子作り』じゃなくて『子授け』ね。『子作り』だとちょっと、生々しいから」 啓吾さんが困った顔で訂正してくれたけれど… え?生々しい?何が?……子…作りって、あ。 「えっ?わっ……いや……えーっっ!!」 ……僕、穴があったら入りたい気持ちです。 あたふたして、顔赤くなってると思う。かわいそうに思ったのか、啓吾さんが頭をよしよしと撫でてくれた。 うー……恥ずかしい…… 田中さん、大爆笑してるしっ。そんなに笑うことないのにっ………もう!この人、敵だ、敵っ! ……まあ、そんなこんなありつつも、僕たち4人は無事拝殿で参拝を済ませたのだった。

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