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第14話

参道を抜けて鳥居をくぐり神社の境内から出ると、駐車場には戻らずに門前町へと足を運ぶ。そこにはお土産屋さんや飲食店などの店が何軒も並んで賑わっていた。 お昼の時間を過ぎてしまってお腹がすいていたので、まずは昼食をと、お蕎麦屋さんに入る。時間がずれていたのがよかったのか、たいして待つこともなくテーブル席に案内された。 僕の横は啓吾さん。目の前には葵君が座って、その横には田中さん。二人に一つで渡されたメニューを覗きながら、あれこれと悩む。 うーん。天ぷらそばもおいしそうだけど、鴨南蛮もいいなあ……天ぷらもいいけど、かき揚げもおいしそう…… あ、いなりずし。これも食べたいなあ……でもこのあと甘いものも間食したいんだよね。この時間にたくさん食べてしまったら、旅館の夕食が食べられなくなりそうな気もするし…… 「……啓吾さん、何頼むの?」 どうにも決められなくって、啓吾さんのメニューを聞いてみる。 「天ざるセットにしようかな」 指をさして教えてくれたセットはざるそばに海老や野菜の天ぷら、いなりずりが2個に小鉢の、ちょっと豪華なセットだった。 あ、いいなあ。いなりずしがついてるんだ……でもちょっと多いかなあ。 うーん。 「……いなりずし、半分こにしようか?ちょっと食べたいんだろ?」 「え?何で分かったの?」 「顔見れば分かるよ、悠希の考えてることは。夕食を考えたらセーブしたいし、半分こにしようよ」 「うん!じゃあ僕は鴨南蛮にする。葵君は決まった?」 やっと決まって顔を上げると、こちらを見ていたらしい葵君と目があったので訊ねる。 「えっ、あっ……うん。僕は天ぷらそばにする。先輩は?」 「俺は割子そばセットにするわ。じゃあ注文するぞ」 田中さんが「すみません!」と声をかけると、すぐに店員さんがやって来てメニューを訊ねた。 「えーと、天ざるセットひとつに鴨南蛮そばを単品でひとつ」 啓吾さんが僕の分までまとめて注文する。仲良く半分この予定……注文するだけで何だか嬉しい。 続いて田中さんが注文。 「割子そばセットひとつに……すみません。そばをうどんに変えることってできますか?」 「はい、できますよ」 「……だってさ」 店員さんの返事を聞いた田中さんがうながすと、パッと顔を上げた葵君が「じゃあ、僕は天ぷらうどんをお願いします!」と自分の分を注文した。 それから田中さんのほうを見ると、ふにゃりと嬉しそうに笑った。 ……もしかして葵君は、そばよりうどん派だったのかな。で、田中さんはちゃんとそれを覚えてて、きいてくれたのかもしれない。 何だか葵君の幸せな気持ちがこちらにも伝わってくるみたいで、見ている僕も嬉しくなって。こちらを向いた葵君とまた目が合うと、二人でうふふと笑ってしまった。

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