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第15話
昼ご飯を食べ終わったら、それぞれのペアで門前町を散策することになった。
時間になったら駐車場に集合。
手を振って葵君と田中さんを見送ると、啓吾さんの隣に並ぶ。何だかデートしてるみたい……じゃなくて、デートってことになるのかな?
「悠希は誰にお土産買うの?」
「えーとね……貴志と梨花ちゃんと……梨花ちゃんのお母さんにも、かな。啓吾さんは?」
「うーん……会社に買っていくかどうか田中と話すの忘れてた。ま、合流したとき買ってなかったら後で買おうかな?それに、お揃いのものも探さなきゃね」
「うん!」
何を一緒に買おうかな?
僕はうきうきした気分で啓吾さんと一緒に歩き出した。
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先輩と一緒に門前町を散策……何だかデートしてるみたいでくすぐったい気分。
再会してからというもの、よく家には来てくれるけれど、なかなか休みが重ならない僕たちは外に出かける機会が少なくて。だからこうして横を歩いていられるのがとっても嬉しいんだ。
ぷらぷらと歩きながらお店をひやかしていると、お土産屋さんの入口でソフトクリームを売っているのを発見。
「……ねえ先輩、ソフトクリーム食べていい?」
横を歩いている先輩に店を指さして尋ねる。
「あー、いいぞ。店の前に座るとこもあるし、ちょっと休むか」
旅行という特別な空間だからかな……何だか今日は素直におねだりができるし、先輩もそれが嬉しそうに見える。
やっぱり連れてきてもらってよかった。
レジでメニューを見ると、ソフトクリームが3種類もある。
「……バニラに抹茶にミックス……どれがいいかなー……」
どれも美味しそうで選べない……うーん、と悩んでいると…
「じゃあ、葵はバニラにしろ。で、俺も抹茶ソフトを買うから。これなら二つとも食べれるだろ?」
そう言って先輩は店員さんに注文してくれた。
……一緒に食べてくれるんだ。何だか嬉しくてふわふわした気分になる。
二人とも一つずつソフトクリームを受け取ると、店先のベンチに腰掛けた。で、ソフトクリームを一口。
「おいしい!」
甘くって、冷たくて、口の中でさっと溶けてしまうこの味。子どもっぽいかもしれないけれど、小さい頃から大好きなんだ。
「どれどれ?」
「へ?……………っ!!」
先輩は僕の手を掴んで動けなくすると、顔をひょいっと近づけて僕のソフトクリームをぺろりと舐めた。
「うん、バニラもうまい。葵も抹茶食べるか?」
今度は僕に、手にしたソフトをぐっと近づける……これってこのまま一口食べろってこと、だよね?そんなの、恥ずかしくって心臓がどうにかなっちゃうよっ!
でも、先輩はそんなことを僕が考えてるなんて少しも気づいていないみたい……なかなか食べようとしない僕に不思議そうな顔をして、さらにソフトクリームを近づけた。
もうっ。
あきらめた僕は意を決して、先輩の手からぱくりとソフトクリームを食べる。
「どうだ?」
「………甘い、です……」
いろんな意味で、甘いです……もう、ソフトクリームじゃなくて僕が溶けてしまいそう……
ひゃーっ、と心の中で大騒ぎしていると、先輩の右手が僕の方へ伸びてきた。
「……………っ!!」
びっくりして固まっていると、先輩の親指が僕の口唇を拭い、そのままそれを自分の口元に運ぶと、親指についたクリームをぺろりと舐めた。
「うん。甘いな」
「……………」
甘いのはソフトクリームより、先輩の方ですっ。
そう言ったらきっと、照れてもうしてくれなくなるかも……そう思った僕は「甘いね」とだけ返事をした。
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