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第41話

……いやいや、それは困る。俺が困る! いつもだったらそれでいいよ。手でも口でもお互いに触り合って、出すものだして、抱き合って眠ればそれはそれで幸せだ。 だけど、今日はダメだ。 今日は俺のせいで葵を悲しませて、泣かせて……本当は早く寝かせてやったほうがいいのかもしれないけれど。でも、どうしても抱きたい。 こいつの中を俺でいっぱいにして、ぴったりと身体をくっつけて、一つになりたい。 それで、葵が俺のもので、俺が葵のものだってことを実感したいんだ。 でも。 立たせようと背中に回していた手を離すと、そのまま葵の横にごろりと転がった。 ……できねーよ、これ以上は。 そりゃあセックスすれば身体は快楽で満たされるかもしれないけれど、俺が欲しいのは葵の身体じゃない。 心が伴ってないのなら、そんなの無意味だ。 葵が望まないことを、俺はしたくない。 「………先輩…?」 「あー」 「………もう、寝ちゃうの?」 「いや……風呂入らないのはいいけど、その代わり、お前の身体は拭かなきゃな」 出した精液は俺が飲んだけど、汗と先走りとで身体はべたべただからな。濡れタオルでも持ってきて拭いてやらなきゃ。 そのあとはせめて、一緒の布団で寝てくれないかな。 「拭いてもどうせ、また汚れちゃうよ?」 「汚れねーよ。もう寝るだけだし」 「え……だってまだ、先輩はイってないでしょ?……もう、しないの?」 身体を傾けて俺の顔を覗きこみ、葵は不安そうな顔で尋ねる……バカだなあ、心配なんてしなくていいのに。 布団の上にのせていた手を見つけてぎゅっと握ると「俺はいいんだよ」と言ってやる。 すると葵は複雑な表情を浮かべて、ぽつりとつぶやいた。 「……………せっかく、準備……してきたのに…」 ん? 準備? 準備ってなんだ? 「おい、待て待て。『準備した』って、何のことだ?」 がばっと起き上がると、葵の方を向き直す。 すると葵もつられて背筋を伸ばした……が、さっき俺が好き放題にいじったままの姿で、肌はあちこち露出して浴衣も乱れたまま。 俺の理性がもちそうにないので、そっと着崩れを直してやる……これでよし。 「準備って……さっきお風呂に入ったでしょ?そのとき洗ってきた…」 「洗うって、身体を?」 「身体も洗ったけどっ……そのー……」 「何?」 「…………あのー……」 「?」 「…………おっ…………お…しり、の……中……も………」 「っ!!」 いや、死ぬかと思った。 自分で尋ねておきながら、あまりの卑猥さに、またまたくらりとした。

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