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第43話

話はもとに戻るが……どんなにかわいくても葵はもちろん男だから、このまま身体を繋げることはできない。それ相応の準備が必要で、俺たちがスムーズに繋がるためには必要なアイテムがある。 そそくさと部屋の隅の棚に移動すると、置いてある旅行バッグを開けてごそごそさぐり……あった。 手にとったのは愛用のローションとコンドームが5枚。 いやいや、一晩で全部使おうってわけではない!決して! 今夜は自宅でするわけじゃないし、シーツを洗うわけにはいかないだろうから、とりあえず葵にもゴムをつけさせようかと思って。で、多めに持ってきたのだ。 別に全部使うくらい、どろどろに抱いてしまおうなんて思っているわけではないっ。 まあ、全部使ってもいいんだけれど。 誰にしてるんだか分からない言い訳を心の中でつぶやいていると、 「わっ!」 ……気づいたら葵も横にいた。 「ど、ど、どうした?」 ちょっとやましいことを考えていたせいもあってか、動揺する俺には一切触れずに、葵は自分のバッグを漁りはじめた。 「……うーん……僕も準備をしようと思って……あ、あった。ほら、これっ」 そう言ってにっこり笑った葵の手には、大判のバスタオルが一枚。 ん?何で、タオル? 今から温泉に入るっていうのか?さっきは入らないって言ったのに? つーか、タオルだったら宿に備え付けのタオルがあるのに、わざわざ家から持ってきたのか? 不思議に思っていると、そのことに気づいたのか、葵は照れたようにタオルをぎゅっと胸に抱いた。 「ここ、家じゃないからシーツなんて簡単に洗えないかなと思って。ローションとか布団にしみこんだら大変だし……だからこれ。これを敷いておけば、シーツを汚すこともないでしょ?」 ふふっと笑って、葵は恥ずかしそうにタオルに顔を半分うずめた。 それがどうしようもないくらいかわいいしぐさで。自分でも準備を怠らないくらい、葵も俺のことを求めていることが嬉しくて。 胸に抱いたタオルごと、俺もぎゅっと葵を抱きしめた。 俺の耳もとでまた、ふふっと笑うと、 「………先輩……続き、しよ?」 腕の中の小悪魔が、また俺に囁いた。

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