174 / 243
第43話
話はもとに戻るが……どんなにかわいくても葵はもちろん男だから、このまま身体を繋げることはできない。それ相応の準備が必要で、俺たちがスムーズに繋がるためには必要なアイテムがある。
そそくさと部屋の隅の棚に移動すると、置いてある旅行バッグを開けてごそごそさぐり……あった。
手にとったのは愛用のローションとコンドームが5枚。
いやいや、一晩で全部使おうってわけではない!決して!
今夜は自宅でするわけじゃないし、シーツを洗うわけにはいかないだろうから、とりあえず葵にもゴムをつけさせようかと思って。で、多めに持ってきたのだ。
別に全部使うくらい、どろどろに抱いてしまおうなんて思っているわけではないっ。
まあ、全部使ってもいいんだけれど。
誰にしてるんだか分からない言い訳を心の中でつぶやいていると、
「わっ!」
……気づいたら葵も横にいた。
「ど、ど、どうした?」
ちょっとやましいことを考えていたせいもあってか、動揺する俺には一切触れずに、葵は自分のバッグを漁りはじめた。
「……うーん……僕も準備をしようと思って……あ、あった。ほら、これっ」
そう言ってにっこり笑った葵の手には、大判のバスタオルが一枚。
ん?何で、タオル?
今から温泉に入るっていうのか?さっきは入らないって言ったのに?
つーか、タオルだったら宿に備え付けのタオルがあるのに、わざわざ家から持ってきたのか?
不思議に思っていると、そのことに気づいたのか、葵は照れたようにタオルをぎゅっと胸に抱いた。
「ここ、家じゃないからシーツなんて簡単に洗えないかなと思って。ローションとか布団にしみこんだら大変だし……だからこれ。これを敷いておけば、シーツを汚すこともないでしょ?」
ふふっと笑って、葵は恥ずかしそうにタオルに顔を半分うずめた。
それがどうしようもないくらいかわいいしぐさで。自分でも準備を怠らないくらい、葵も俺のことを求めていることが嬉しくて。
胸に抱いたタオルごと、俺もぎゅっと葵を抱きしめた。
俺の耳もとでまた、ふふっと笑うと、
「………先輩……続き、しよ?」
腕の中の小悪魔が、また俺に囁いた。
ともだちにシェアしよう!