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第6話
「─────え…?」
先輩が後ろに下がると同時に、先輩のもずるりと僕のナカから出ていって……すっかり蕩けきって拓かれていた僕の孔が、喪失感に切なく震える。
……どうして?……最後までしないの?
中途半端に放り出された身体が切なくうずいて……我慢できそうになくて先輩にすがろうとしたそのとき。
「あっ……ふぅんっ……んふっ…あ……んん……」
ぐいっと強い力で強引に身体を後ろ向きにされ、驚いて開いてしまった口に先輩の唇が……舌が押し当てられたのだった。
───ちゅぷ…くちゅ……ちゅぷん……ちゅっ……
僕の耳に、濡れたような口づけの音が響く。
頭の中がじーんとしびれて、足に力が入らなくなってしまう…
先輩とするキスが好き……唇を食んだり……舌を絡めあったり……唾液を交換し合ったり……こんなこと、もちろん先輩としかしたことないけれど、キスをしてるとすごく満たされる。
他の人でもそうなのかな……それとも、先輩とだから特別なのかな……
先輩の舌の蠢きを追うのに夢中になっていたら、気づかないうちに後ろのダイニングテーブルまで移動していて、先輩は僕を軽々と抱え上げると、テーブルの上に座らせた。
そのままテーブルに押し倒されて……よかった。まだ皿もカトラリーも何一つ用意してない……先輩は僕の髪を、頭を撫でながら深い深いキスを続ける。
ああ、もどかしい…
キスは大好きだけれど、そろそろ僕のナカに挿れてほしい。また一つに繋がりたいんだ。
口がふさがれているからおねだりができなくて、仕方がないからぷらぷらとテーブルの上から投げ出していた足を先輩の腰に巻きつける。
そして、ぐっと自分の身体の方へ引き寄せてみた。
すると先輩は「……我慢がきかないやつだな」と苦笑しながらも、もう一度熱い昂ぶりを僕のソコに押し当てた。
「あっ………は……はああんっ……」
太くて固いモノがまた僕を満たしていく。
奥まで挿し込まれると引き抜かれ、引き抜かれると挿し込まれる。繰り返される不規則な先輩の律動。
絶え間なく与えられる快感の波に、僕のすべてをもっていかれそうで……でも、まだイキたくない。
もう少し先輩に求められていたい…
少しでも長く我慢ができるように、先輩の唇から自分の唇を離してキスを中断する。
そんな僕の気持ちを分かっているのかいないのか……先輩はくすりと笑うと、さらに強く腰と腰とをぶつけだした。
「あんっ、あっ、あっ、ああっ…だめ……だめぇ…ひゃあんっ」
ああ、もうダメ!もうイってしまいそう!
このままでは気をやってしまいそうで、何とか波を堪えようと顔を横に向けると…
「─────っ!」
………テーブルの上に置かれたままの先輩の携帯電話がちかちかと光り出した。
マナーモードにしているのか着信音は鳴らないけれど、この点滅は着信を知らせるものだ。
心がひゅっと冷えて、何だか苦しくて仕方がない……せっかく先輩に抱かれてるのに……先輩が抱いてくれてるのに…
着信があることを知られたくなくて、先輩の首に腕を回すとぐっと引き寄せて抱きつく……テーブルの上が見えなくなるように。
そんな僕の気持ちやずるさになんて、気づいてもいないのだろう。
先輩は僕の首筋を舌で舐め上げると「お前、ホントかわいいな」と吐息の混じった声で囁いた。
……かわいくない。
僕なんてちっともかわいくない…のに。
そのまま、先輩が僕のナカで果てるまで、着信があったことはずっと黙っていた。
───僕はただの、卑怯者だ。
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