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第8話

先輩からもう一度電話がかかってきたのは、駅前のスーパーで買い物を済ませて、ちょうど店を出たところだった。 『葵、今どこだ?』 「えーとね、先輩の家の近くのスーパーで買い物をしたところ。今から家に向かうよ」 『そうか……俺は定時では上がれなくって、とりあえず一時間残業してきた。今、会社の近くの駅に着いたとこ』 「お仕事、お疲れ様。じゃあ僕、先輩の鍵を使って先に中に入っておくね」 『ああ、頼む。なるべく早く帰るから』 そう言って、先輩との通話は切れた。 手にしたスーパーの袋の中に入っているのは合いびき肉と卵、玉ねぎに牛乳に……今夜はハンバーグにするつもり。昨日はちょっと手抜きだったから、今日は先輩の好きなものを作ってあげるんだ。 ソースはどうしようかな。トマトベースのソースを作ろうかな。それとも大根があったからおろしポン酢で食べようかな。 喜んでくれる先輩の顔が目に浮かぶようで、駅から十分の道もあっという間な感じがする。 先輩のアパートについて、二階への階段を上る。 ポケットから鍵を出そうかとごそごそしているうちに、ふと気がついた。 「……………え?」 ───誰?この人…… 先輩の部屋のドアの前に、綺麗な若い女の人が、すっと立っていた。

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