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第14話
結局、電車がホームに近づいていることを知らせるアナウンスが流れるまで、僕たちはベンチに座っていた。
何にもしゃべらなかったけど息苦しくはなくて、自然と涙はおさまっていた。
「……三枝君……ありがとう…」
もし一人だったなら、もっと落ち込んでいたかもしれない。
甘い紅茶と、静かに横にいてくれた三枝君のおかげで、何とか心を落ち着かせることができた。
「別に何もしてないですよ。内村さんと一緒にいるのは、俺も居心地がいいんで」
「そう?僕も居心地よかったかも。──三枝君、本当は一人称『俺』なんだね」
「あ、すいません。つい」
「いや、何か、仲良くなった感じがするなあと思って。今度は僕が三枝君のお悩み相談にのるかららね!」
「……何すかソレ」
「えー、お礼だよっ。お礼!今日は助けてもらっちゃったから、何かお礼しなくちゃね」
「別にそんなの、いらないですけど………あー、どうしてもって言うなら、今度俺に手料理ご馳走してくださいよ」
「………手料理?」
「ええ。この前の手作りチョコ、結局みんなに食べられて、俺一個も食べてないですから」
「ああ、そうだったね。わかった。今度三枝君のために何かご馳走するよ。楽しみにしてて!」
そんなことを話していると、ホームに電車が入ってきた。
この電車に乗るのは僕だけで、三枝君は次の電車に乗る。だから、ここでお別れ。
「じゃあね。きょうはありがと」
開いたドアに入り、後ろを振り返ってもう一度礼を言うと……三枝君は何だか真剣な表情でこちらをまっすぐ見ていた。
「三枝君?」
「………俺、どんなあなたでも好きですから」
「え?」
「落ち込んでても、悩んでても、怖がってても……内村さんらしくていいと思いますよ。だからもっと、自分に自信をもってください」
「……………ありがとう」
三枝君が優しく笑うと、ドアが閉まった。
ドアの向こう側で小さく手を振ってくれるから、僕も振り返す。
僕は三枝君が言ってくれたような人間じゃあ、ないけれど……彼の優しさが、今の僕には嬉しかった。
「………三枝君………いい子だなぁ………」
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