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第35話

キスするの……何日ぶりかな? 久しぶりだから、こんなにドキドキするのかな… ついこの前までは自然にできていたのに、何だか今日はぎこちなくなってしまう… そんなことを考えていると、先輩は目を閉じた。 今、先輩は仰向けでベッドに転がっているから、当然僕が上にのっている……この状況で先輩が目を閉じるってことは、僕からキスしろってこと? ……うー……何だかこう、改まると緊張しちゃうんだけど…! とりあえず先輩の頬を右手で撫でると、ふっと口もとが緩んだ。そのまま、先輩の唇を親指でなぞる。 少し薄めの先輩の唇……笑うと左の口角が右より上がるのが、すごく好き。 この唇とキスをするのも、すごく好き。 そっと顔を近づけると、ちゅっと軽く音を立ててキスをした。少し顔を上げると、先輩の左の口角が上がった。 ──先輩は僕とするキス、好きかなあ。 女の子の唇みたいに柔らかくないし……まさか口紅や、グロス?なんて塗って、てかてかにするわけにもいかないし… せめてカサカサにはならないように、冬場は気をつけてはいたんだけど……どうかなあ。 そんなことを考えて……何だか気持ちが不安で沈んでいきそうになって……で、慌ててふるふると首を振る。 いけない。こういう考え方。 だって、さっきあんなに先輩に『好きだ』って、『恋人だ』って言ってもらったのに……もっと自信をもたなくっちゃ。 もう一度触れるだけのキスをする……もう一度……もう一度…… 何度唇を重ねても満足ができなくって、最後の一回は先輩の下唇を自分の唇で食んでから離した。 さあ、そろそろ先輩を放してあげなくっちゃ……お腹が空いてるかもしれないし、明日は二人とも仕事だし…… 起き上がろうとしたとたん、ぐっと後頭部を押えられた。 ──伸びた先輩の右手に。 「───ふぇっ?」 動けなくなって驚きの声を上げた僕に、ふっと先輩は笑ってその開いた口もとから、ちろりと舌をつき出した。 『……ほら、もっともっとキスを味わいたいんだろ?』 口には出さないけれど、そう言ってる気がして……もう一度先輩の頬に手を添えると、自分の舌を先輩の舌に絡ませた。

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