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第36話
くちゅ、くちゅ…と、二人の間から濡れた音が響く。
今度は唇を重ねるのではなくて、舌と舌を絡ませて……そのまま、先輩の唇に噛みついた。
舌を差し込むと、先輩の舌も誘いこむように僕の舌をちろちろと撫でた。
それでは物足りなくって……両手で先輩の顔を押えると、舌を強く絡ませる。
……いつも先輩がしているようにすれば、先輩も気持ちよくなってくれるかなあ……でも、どんなふうにしてくれているのか、ちっとも思い出せない。
舌と舌が絡むたびに頭はぼーっとして……胸はぐっと切なくなって…下半身が痺れてくる……
……好き……大好き……
長い時間深いキスをして……堪能して……ようやく先輩の手が離れると、僕はそのまま先輩の肩に額を押し当てた。
気持ちよすぎて、腰に力が入らなくなってしまったから。
すると…
「ひゃあん!」
先輩の両手が僕の……お、おしりを、ぐっと掴んだんだ。
「──あーあ、俺明日は仕事なんだけど?」
「え?」
「葵も明日は仕事だろ?」
「………うん」
「じゃあ、どうすんの?これ……ほら」
「あ、あんっ!」
先輩は僕のおしりを掴んで動けなくしたまま、腰をぐりっと押し当てた。
そのまま先輩は痺れるような甘い声で、僕に囁いた。
「─────葵の……勃ってる」
ああ、ばれてる…!
キスで……ただキスをしただけで、僕の身体がこんなに熱くなって……感じてしまっていること。
は、恥ずかしい!
何だかとってもいたたまれなくって…ぎゅっと先輩の首にしがみついた。
それなのに先輩は、僕の気持ちなんてちっとも気づかないようで、楽しそうに笑ってる。
……もう!恥ずかしいってこと、何で分かってくんないの!?
思わず首に噛みついてやろうかと、身体をずるりと動かしたら…
「……………あ……」
「そ。恥ずかしがらなくていいよ。俺もだから」
……下半身にさっきまで感じていなかった違和感…
首に回していた手をそっと下へ動かして、まさぐってみると………あ。
「俺もキスしただけで勃っちまった」
───そうおかしそうに笑って話す先輩のも、確かにすっかり固くなって……スーツを押し上げていた。
「……先輩、明日仕事だよ?」
「ああ」
「僕も仕事だし…」
「そうだな」
「……………」
「………葵?」
さっき先輩が言ったこと、分かっているのに繰り返してしまった……分かってる。分かってるけど…
「………でも、したい…です」
すごく、すごく先輩が欲しい。
今すぐ先輩と身体を繋げて一つになりたい。
僕が先輩のものだってことを……先輩は僕のものだってことを……身体で実感したかった。
でも…
「お前、明日休めるの?」
「それは……無理…」
「だよな。俺も明日は無理。大事な会議があるんだよ。今したら、絶対歯止めがきかねーし…」
──これが、今の僕たちの現実。
もういい大人なんだから、仕事を蔑ろにはできない。
いくら心も身体も先輩を求めてるからって、やみくもにセックスに更けるなんて……できるわけないんだ。
先輩は僕の頭に手を添えて引き寄せると、もう一度触れるだけのキスをした。
「………あ、ん……」
軽いキスなのに、下半身がじん……と痺れる。自分でもどうにもできないくらい淫らな身体で恥ずかしい…
もう、どうしよう……まるで僕の身体じゃなくなってしまったみたいに我慢がきかない…
腰に力が入らなくなって、先輩の上にぺったりとくっついていると……先輩は僕の耳もとに口唇を寄せて、甘い声で囁いた。
「………挿れてはやれないけど、口でしてやろうか?」
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