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第39話

ぎゅっと抱き合っていたら、先輩がキスをしてくれた。最初はそっと触れるだけの甘いキスだったけど、だんだん深いものに変わっていって…… 先輩の舌に翻弄されているうちに、頭の中がぼんやりしてきて……気がついたら、ベッドの上だった。 知らないうちに眼鏡も下着もどこかにいってしまったようで、ぼやっと見える天井を眺めていると、下半身が甘く痺れた。 はっとして目をやると、先輩が僕のをそっと掴んで、やわやわと刺激している。 「せ、先輩!」 「んー?気持ちいいか?」 「そうじゃなくって!………もう!」 仰向けに転がっていた身体を何とか起こすと、先輩の手を上から押さえて動きを止める。 「勝手に手でしちゃ、ダメ!」 「あー……わりぃわりぃ。そういや、フェラするって約束だったな」 そう言うと先輩は、あーんと大きく口を開けて僕のを咥えようとする──けど、ちょっと待って! 「ダメダメ!それも違うよ!僕もしたいんだってば!」 先輩のおでこを押さえて動きを封じると、すっかり忘れてしまっているらしい、さっきの約束を伝えた。 一人だけ気持ちよくなっても意味がない……今夜は一緒に気持ちよくなりたいんだ。 「……一緒に?」 「一緒に!」 「……一緒にすんの?」 「一緒にするの!」 「……するって…二人とも口で、だろ?」 「そう、口で!」 ……って、あれ? そういえば『二人とも口で』ってどうやってすればいいのかな? 僕が先輩にしてあげたことも、僕が先輩にしてもらったこともあるけれど、二人で一緒にってのは一度もしたことがない気がする。 こういうとき、どうしたらいいのかな?? 「………葵さ、学生の頃にエロ本の回し読みとか、した?」 「え?…んー、ちらっと見たことはあったけど、恥ずかしくてあんまり見れなかった、かも」 「んじゃさ、AVは?男友達で集まってアダルトビデオの鑑賞会とか」 「何それ!?そんなの、したことないよう!」 一緒にエッチなビデオを見るってどういうシチュエーション!?それで、その……た、勃っちゃったら、どーすんの!? 「お前、健全な青春時代を送ってたんだなあ…っていうか、むしろ不健全かもしれないけど」 先輩はやれやれといった顔で、いつものように僕の頬っぺたをふにふにつまんだ。 うー……もしかしてちょっと、バカにされてる? 「だって、そういうの……興味なかったんだもん。誰かを好きになるって感覚もよくわかんなかったし……声変りとか精通も遅かったし……こういうことしたいって思ったのは、先輩と出会ってからだもん……」 先輩と出会わなかったらきっと、こういう行為とは無縁の生き方をしてたかもしれない。 心も身体もどろどろに溶けて一つになるような感覚を、知らずに生きていたかもしれない。 先輩が僕の身体に教えてくれたことがすべてで、他の誰からも何からも、性的な知識なんて得たことはないんだ。 ──それって、だめなこと? 「………あー、もう……お前ってやつは、ホント……」 すると先輩は呆れたような声を出すと、僕をぎゅっと抱きしめた。 ぴったり身体がくっつくと、もちろん先輩の熱く昂ったそれもくっついて… 「………ひゃ、あんっ……」 ………変な声、出ちゃった… 先輩はそれを聞いてなぜか息をのむと、僕の耳に口唇を押し当ててキスをしてから囁いた。 「わかった。今夜はお前に『シックスナイン』を教えてやるよ」

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